休業要請/国と東京都の「ドタバタ劇」とは? ・・・法律が悪いのではなく「悪用」が問題
2020年4月12日 tag:
先週、小池都知事と国との間で「ドタバタ劇」がありました。都が要請する施設の休業について、その対象業種をどうするかを巡ってです。
小池都知事の言葉を借りると、「それぞれの地域の特性があり、だからこそ(法律は)都道府県知事に権限を与えたと思う。ただ権限は代表取締役社長(知事)にあると思っていたら、天の声(=国)が色々と聞こえまして、中間管理職になったような感じ」と。
ある人に言わせると、「この新型インフルエンザ等対策特別措置法(3月にコロナウィルスを対象にする法改正)の建付けが悪い。一方で都知事に要請権限を与えながら、国にも基本的対処方針策定と総合調整の権限を与えている。だから、その対処方針に国との協議を書けば、知事はそれに従うしかなくなる」。
しかし、私はそうは思いません。この法律は、確かに「緊急事態宣言」の発出や上記権限を国に与えていますが、具体的な「緊急事態措置」等の実施権限は都道府県知事に与えているのです。なぜか。それは都知事も言うように、感染の実態に通暁している現場の知事に、その地域の実情に応じた具体的な措置を策定、実施させるのが最適だとの判断だからです。背景には、「地方自治」や「地方分権」の流れもあったことでしょう。
しかし、安倍政権は、お得意の悪知恵を働かせて、法律の規定を「悪用」した。憲法九条の長年の「公権解釈」までも変えてしまう政権ですから、こんなことはお手のものでしょう。小池知事の「独断専行」を牽制するため、緊急事態宣言発出と同時に「対処方針」を改正し、急遽、「国に協議」と「外出の自粛等の協力の効果を見極めた上で行う」という文言を盛り込んだのです。
ただ、「これが違法か?」と言うと、残念ながら、そこまでは言えません。こうした行政機関同士の関係には、対国民と違って、かなりの裁量の余地が認められるからです。しかし、法の趣旨からすれば、「国との協議」なぞ想定されておらす、それを逸脱していると言うしかありません。そう、適不適の問題なのです。安倍政権は、不当な介入で、この法律の体系、趣旨を逸脱した行動に出たのです。
それでは、なぜ、私が法律の趣旨をそう解するか。それはこの法律の条文をこまめに読み込めばわかることです。この法律には、百条を超える条文があり、国(政府対策本部)や都道府県知事、関係行政機関との関係を事細かく法律で規定しています。仮に、都道府県知事が「緊急事態措置」を実施する際に、国との事前協議が必要なら、当然、そんな重要な規定は、他の関係条項との権衡上、法律で規定したはずです。その条文がないということは、その反対解釈で、その権限は都道府県知事に任せたと解するのが自然だからです。
ちなみに、法律は、都道府県知事が必要な措置を実施しない場合に、実施を国が「指示」できる権限も与えています。これで十分だという趣旨でしょう。
にもかかわらず、安倍政権は「対処方針」を悪用し、その中に「国と協議」という文言を入れた。この「対処方針」自体は法律で規定されていますが、その具体的内容は「新型コロナウイルス感染症対策本部決定」という政府の決定でなされているだけです。こんな決定で国会が決めた法律の趣旨を逸脱することは不当です。
この解釈は、なにも私だけの考えではありません。念のため、この新型インフル法を初めて制定(2012年)した当時の方(民主党政権時代の中心的な当事者)に聞いてみましたが、全く私と同じ考えだとエンドースしてくれました。
このことは、3月に改正法が制定された時の附帯決議をみてもわかります。その「四」に「都道府県知事は、緊急事態措置を実施した時は、その旨と理由を政府対策本部長に報告すること」と書いてあります。そう「報告」すれば良いだけで、「事前協議」は、そもそも立法機関の国会は想定していない証でしょう。
今回の「ドタバタ劇」は、小池都知事vs安倍官邸の「痴話げんか」のようなものでした。そんなものに巻き込まれて、一番、迷惑を被ったのは、対象業種になるか否か、気を揉んでいた関係事業者の皆さんではないでしょうか。「もう付き合いきれない」という声も上がっているということですが、今後、一丸となってコロナウィルス撲滅の戦いに勝利するためにも、このような政治的な「つばぜり合い」はやめていただきたいものです。
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