選挙経れば野党は1つに/経済政策で「何でも反対」のイメージを払拭する(毎日新聞1/3)
2019年1月23日 tag:
(毎日新聞「政治プレミア」記事から)
2017年の衆院選以来、野党はバラバラになったままだ。そのことが安倍政権の「1強政治」を許している。無所属の会でやってきた我々が立憲民主党と会派を同じくするのは、国民に政権交代可能な選択肢を示す、その第一歩とするためだ。
19年は統一地方選と参院選という大きな選挙が2つある。ここで民意がどう出るか。立憲民主党と国民民主党がそれぞれ候補を立てて戦えば明確に結果がでる。選挙を経ておのずから収れんしていくことだろう。
政治家というのはやはり選挙を意識して動くものだ。18年は大きな選挙がなく野党再編は動かなかった。19年はある意味で期待できる年になると思っている。
参院選後、野党に大きな動きがあるだろう。議員がそれぞれの判断で動き始めれば党勢が盛んな党のほうに集まっていく力が働く。
ましてや衆参同日選になれば、衆院議員にもおしりに火が付く。そうなれば「火事場の馬鹿力」で、その前に野党が一つになることもありうる。
◇原発ゼロで日本の将来像示す
今の野党の最大の問題点は、実は違うのだが、「何でも反対」というイメージを持たれていることだ。
安倍政権の支持率が堅調なのは、経済が安定しているという一点につきる。経済は「経世済民」で国家の基本だ。ところが立憲をはじめとする野党のイメージは「アンチビジネス」。これでは政権交代しても途端に市場からNOを突きつけられる。次の選挙では、このイメージを払拭して、「分配」だけでない、総合的な経済政策を出す必要がある。
私のひとつの提案は「原発ゼロでイノベーション!」だ。「原発ゼロ」で止めるから反対だけになる。その先を描いてみせる必要がある。
原発ゼロなら再生可能エネルギーを拡大するしかない。可能性があるのは地方だ。太陽光、風力、地熱発電などの適地はみな地方にある。
地産地消で、小規模分散型の発電所を多く作れば雇用も生まれ、地域おこしにもつながる。再生可能エネルギーの電気が不安定というなら、スマートグリッド(電力の流れを供給側・需要側の両方から制御し、最適化できる送電網)で対応すれば良い。省エネも、IOTやAIを活用すれば、まだまだ進む。
原発ゼロは中央集権を変え、地方分権を進める起爆剤にもなり、日本の将来を切り開いていくイノベーションを起こす原動力にもなる。
日本人は、「大きな目標」があれば、それが困難な「壁」であるほど乗り越える「力」があると私は信じている。昔は「欧米に追いつけ追いこせ」。オイルショック後は「脱石油依存」。日本は、見事に「経済大国」となり、「世界一の省エネ大国」になった。
政治の役割は、こうした「夢のある目標」を掲げ、その具体策を示すことだ。それが原発に頼らない「自然エネルギ―立国」。これは単なる「エネルギー革命」に止まらず、「生活様式」や「国のかたち」を変える大変革となりうる。
◇増税は政治が手を尽くしたうえで
消費増税をするならば、国民が納得する政治プロセスを示さなければならない。みんなの党を結成した時のキャッチコピーで言えば「増税の前にやるべきことがある」ということだ。
なにより、国民の理解を得るためには議員や官僚が身を切らないといけない。ところが、今回は増税の前に参院の議員定数を6人も増やす。自分たちは甘い汁を吸っておいて国民には負担増などということが通るはずがない。また、増税に耐えうる経済体力をつけることが先決だ。増税しても税収が下がれば元も子もない。
社会保障の財源が必要というなら、消費増税だけに頼るのではなく総合的な税制改革をすべきだ。
所得税の最高税率は45%だが、株式分離課税の税率は20%だ。このため、株式を多く保有する富裕層では年収が1億円を超えると負担率が下がる。これを国際標準の30%に上げるだけで兆単位で財源が出る。
法人税も、実は租税特別措置などによって大企業の負担率が一番低い。資本金1~5億円程度の中堅企業が一番高く、中小企業さえ大企業より負担している。大企業にも適正な負担を求めるべきだ。
こうしたことを放置したまま、なぜ逆進性のある消費税だけ引き上げるのか。とりやすいところからとっているとしか思えない。税制の抜本改革などで政治が手を尽くし、国会議員が身を切ったうえでなら国民も増税に納得する。それは自民党には絶対にできないことだ。
江田憲司(えだ・けんじ)衆院議員
1956年生まれ。通商産業省、橋本龍太郎首相秘書官などを経て2002年衆院初当選。みんなの党幹事長、結いの党代表、維新の党代表、民進党代表代行などを歴任した。衆院神奈川8区、当選6回。
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