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米中「全面戦争」の様相へ・・・単なる貿易戦争ではない!

2018年10月11日  tag:


 ワシントンの一次(生)情報を集めてみると、今や米中は「貿易戦争」にとどまらず、「全面戦争」の様相を来たしているという。日本の論調にみられるような「中間選挙前のブラフ」でもなんでもない。その象徴が、米国保守系シンクタンク(ハドソン研究所*注)で行われたペンス副大統領の演説(10/4)だった。

(注)この研究所の中国戦略センター所長はピルズベリー博士。その著書「CHINA2049」は中国の世界覇権戦略を「百年マラソン」と称し、周到に分析。ここでペンス氏が演説したことに「意味」があるとされる。

 そこでペンスは、中国を通商・貿易面だけなく、外交や軍事面でも厳しく批判した。日本でも多少は報道されたが、それが米中関係にとってクリティカルな演説であったことはあまり認識されていない。そう、これは米中双方において、実質上、中国への「宣戦布告」だと理解されているのだ。ニューヨークタイムズは「新冷戦への号砲」と評し、一部中国メディアも「中国共産党に宣戦布告」と報じた。

 ただ、多少「自制」されているのは、それがトランプ大統領ではなく副大統領の演説だったという点だ。トップが行うと事態は決定的に深刻化するし、かと言って国務長官レベルでは迫力がない。そして、その意味するところを中国も良くわかっているという。トランプ大統領は、その対中国の戦線に集中するために、カナダ、メキシコとNAFTA交渉を決着させ、EU、日本とも貿易問題の決着に向けて交渉を開始したとされる。

 どうして、ここまで中国との関係が悪化したのか。昨年11月、北京でのトランプ・習近平会談で演出した友好ムードは一体どこに行ってしまったのか。

 もちろん、中国による知的財産権の侵害や米国企業の機密略奪といった理由もあるだろう。西太平洋、特に、南シナ海における米国の覇権、世界秩序への挑戦という理由もある。が、やはり、中国が中間選挙に介入し、妨害しようとしていることが大きいのではないか。ペンス氏も先の演説で「中国は米国の民主主義に介入している」と糾弾した。

 ペンス氏の言葉を借りると、中国は「米国の産業界、大学、シンクタンク、学者、ジャーナリスト等に豊富な資金を提供し、米国世論を操作している」「米国企業に対し、米政府の政策に反対しないと事業免許を取り消すと脅した」「報復関税は、中間選挙の動向を左右する産業と州を狙い撃ちしている」「中国国際放送局は親中的な番組を米国の主な都市の30以上の局で流している」等々。

 この点、米国土安全保障局長官も議会で10月10日、中間選挙に向けて中国が「米国の世論に影響を及ぼそうと前例のない取り組みを進めている」「サイバー攻撃だけでなく、それよりはるかに広範な影響力行使や干渉キャンペーンがある」と指摘した。先に行われた北京での外相クラスの会合でも、ポンペイオ国務長官は、これら状況を受けて、容赦なく中国の人権や知的財産権問題、選挙妨害等を非難したという。

 最近、中国では、有名女優の脱税やICPO長官の収賄等が摘発されているが、これらは、こうした対米緊張の裏返しで、それだけ習近平は国内的に追い詰められているという証左だという見立てもある。特に後者は、少なくとも、国際的にそれだけの恥をさらしてもやらざるをえない国内事情があったからだろうというのだ。

 ちなみに、この作用・反作用で、先般の日米首脳会談では奇妙な「ディール」が成立したという。「TAG」か「FTA」かという「同床異夢」の決着のことだ。この交渉は、米国ではFTAそのものと理解されており、先のペンス演説でもそう称している。日本は国内対策のために安倍首相が「TAG」(モノについての貿易交渉)と言っているのであり、米国は、日本がそう言いたいなら良かろうという程度の話だ。

 いずれにせよ、米国の本音は、農産品の関税や輸入枠をTPP並みに日本に呑ませれば良い、そして、シンゾーが言うから、その交渉の間は自動車関税はかけないということだ。一方、日本側は相当働きかけたようだが、TPPで受け入れた米国自動車関税の撤廃は呑まない。こういうラインで決着したようだ。

 したがって、今後の日米貿易交渉の焦点は、米国がカナダやメキシコ、韓国に呑ませたような自動車の「数量制限」をめぐってということになる。その後のことは対中関係の推移を見ながら、日本とは臨機応変に対応していけば良いということだろう。

 今日(10/11)、米国市場で株価が急落したことを受けて、日本株も急落(915円安)した。直接的な要因は米長期金利の上昇だが、この米中貿易摩擦の激化、先行き不透明感も大きな要因だ。それが今後「米中全面戦争」への様相を深めていくとすれば、日銀の大量国債購入と公的資金による株価買支えという「砂上の楼閣」の上に立っている日本経済などひとたまりもないだろう。

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