北方領土交渉の転換点・・・プーチン「前提条件なしの平和条約」の真意
2018年9月13日 tag:
思えば、ロシアとの北方領土交渉が明らかに転換点を迎え、挫折したのが、谷内国家安全保障局長の訪露時(2016年11月)の不用意な「失言」だった。
ここで彼は外務官僚の「生真面目さ」から、ロシア側の問いかけに、北方領土返還後の米軍基地設置の可能性に言及したのだ。
その前の秋口から年末の「山口会談」に向けて、官邸からは盛んに「二島返還。あとの二島は継続協議」という情報が流された。この流れをぶち壊したのがこの発言だった。その証拠に、「山口会談」の結果は格下の「プレス向け声明」に終わり、そこに「領土」の二文字すらなかった。
その後、プーチン大統領は、この四島の「安全保障上の重要性」を理由に態度を硬化させ、その軍事基地化を進めてきたのだ。ここはロシア艦隊の太平洋への出口であり、米国からの攻撃(特に原子力潜水艦)を防御する戦略的要衝の地なのだと。
今回の発言(前提条件なしの平和条約締結)はその延長線上にあり、その意図は明らかに「領土問題棚上げ」である。上記問題が解決されない限り(それは現時点では極めて困難な情勢だが)、「共同経済活動」なるものをいくら進めても、その先に領土問題の解決は、残念ながら、ないだろう。
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