人の不幸を踏み台にして経済成長?観光立国?それが日本の「国柄」か!? ・・・シリーズ②カジノは「周回遅れのビジネスモデル」。「経済成長」にも「観光立国」にも資さない
2018年6月 4日 tag:
それでは具体的に、政府の言うカジノの効用も含めて、そのメリット、デメリットについて、具体的に論じていきましょう。
まず、その「経済成長」効果です。カジノ(IR)をつくれば、一時的に建設投資等でGDPに寄与するのは当たり前のことでしょう。しかし、賭博は所詮、人から掛け金を巻き上げる「ゼロサムゲーム」。儲かる人がいれば、必ずその分だけ損する人がいる。付加価値を産み出さないのです。
そして、ギャンブル中毒(依存症)になれば、家庭内暴力や離婚で家庭崩壊・一家離散、はては自己破産、自殺等々の悲惨な現実が進行していきます。その対策経費、救済経費も莫大なものになるでしょう。韓国では全部で7.7兆円の損失という試算もありますし、米国ニューハンプシャー州の報告では、その社会的コストは「病的ギャンブラー」1人当たり5144ドルという推計もあります。
こうしたカジノが生み出す負の側面、コストも踏まえた総合的評価が欠かせないのに、政府は全くそういう評価やシミュレーションすらしていないということが国会審議で明らかになりました。これではとても「カジノGO!」という判断はできないはずです。
政府が目指す「観光立国」には大賛成です。しかし、なぜ今、外国人観光客が増え続けているのでしょうか。それは日本の伝統、文化、豊かな自然、他の国にない、その魅力に惹かれてのことではないのでしょうか。観光庁の調査でも、「日本食」や「温泉」、「古民家が建ち並ぶ町並み」などが外国人がとらえる「日本の魅力」となっています。何も、どこの国にもあるカジノに頼る必要はありません。「観光立国」を目指すなら、日本らしい魅力とポテンシャルを活用していけば良いのです。
(外国人観光客の増加)安倍政権、その前の民主党政権時代からの「ビザの緩和」や「円安」の影響もあっての倍々ゲーム
2012年 836万人 2015年 1974万人 2016年 2404万人 2017年 2869万人
(人気の高い景勝地)
・飛騨高山(人口5倍の外国人が訪れる。古い町並みや里山、田園の風景を好む。「飛騨 里山サイクリング」では参加者の80%以上は外国人旅行者)
・新倉山浅間公園(山梨県富士吉田市。五重塔と富士山のコントラストが人気)
・高野山奥の院(外国人観光客が毎年増加。浮世と全く違う幻想的な時間が流れている。 特に西洋人にとって神秘的。スピリチュアルな場所として人気)
・白谷雲水峡(屋久島町。原生林に覆われ、苔むす幻想的な雰囲気が人気)
そして、カジノはもう「過当競争で飽和状態」、「周回遅れのビジネスモデル」なのです。今更、日本に新設しても、後発で既存のパイの奪い合いになることは必定。「外国人狙い」とは言っても、その多くは中国人(韓国カジノも過半数は中国人客)でしょうが、「爆買いブーム」はとっくに過ぎ、習近平政権の「綱紀粛正(腐敗撲滅)」や「外交政策」にも観光客数は左右されます。そもそも中国人なら中国語が通じるマカオのカジノに行くのではないですか。こうした極めて不安定なビジネスモデルでは、経済成長に資するとはとても思えません(続く)。
(カジノビジネスモデルの崩壊)
アトランティックシティでは1/3のカジノが閉鎖。地域おこしの象徴だったトゥニカ(ミシシッピー州)でも最大カジノが閉鎖。過当競争とオンラインカジノ普及が背景。日本周辺のカジノ新設の動きをみても、韓国・仁川国際空港にはパラダイスシティーカジノが昨年開業。済州島にも新設計画。台湾もカジノ合法化。競争環境は厳しい。
カジノには「カニバリゼーション(共食い)」という問題もあります。米国では、カジノ創設により、周辺地域での消費減少、地場産業の倒産による雇用喪失と税収減が報告されています。ニューハンプシャー州では、カジノ開業で周辺地域から40%~60%の「消費の置き換え」が発生すると推計されています。
カジノを作っても巨大ホテルでカジノ客を囲い込むだけで周辺地域に金は落ちない、カジノで金を使ってどうやって周辺地域で買い物をするのか、観光をするのか、どころか、従来なら、地元商店街に落としていたお金がカジノ(IR)という巨大ショッピングセンターに吸い尽くされてしまうというのです。これでは地域振興どころか地域衰退に拍車をかけるということになりかねません。しかし、政府は、こうした地域経済への悪影響についても、全く評価・分析していないことも明らかになりました。
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