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北方領土交渉・・・新しいアプローチ? 経産省主導で棚上げに

2016年12月26日  tag:

 ここに何か書き込むと、すぐ「対案は?」「批判ばかりで情けない」と書き込む人がいます。しかし、常に、起承転結、対案つきで書かなければならないのなら、こんなブログは書けません。これでも忙しい合間、できるだけ皆さんに情報提供しようと思って書いているのですから。

 野党は、時の政権をチェックし、その問題点を指摘し、批判するのが第一の役割です。そうじゃないと「オール日本与党化」してしまいます。そうでなくても今「一党独裁の怖い政治」が目も前にあるのではないですか?本来、権力をチェックすべきメディアですら、一部、安倍官邸の広告塔と化しているではありませんか。

 対案と言いますが、とっくに選挙公約、百本近い議員立法で出しています。それが国民に知られていないのは、テレビでは、政策論争は面白くないから視聴率がとれない、新聞各紙では、政治部は「政局」が主で「政策」は二の次、ということで、まじめな政策ほど報道されないからです。我々の発信の仕方も工夫していく必要がありますが、それが現実でもあります。

 北方領土について言えば、賢明なる読者の皆さんは「行間」を読んでいただいていると思いますが、要は、そもそもこんな主権に係る難しい問題は、その「タイミング」が大事だと言っているのです。何らかの事情で相手方が困っている時しか進まない。外交は駆け引き、バーゲニングなのです。にもかかわらず、安倍さんの「歴史に名を残したい」という功名心で、前のめりの姿勢で、日本側が一方的にカードを切ってもらっては困る、それでは後の政権のやりようがなくなると言っているのです。その「タイミング」でない時は、「ここは我慢」という「待ちの姿勢」も領土交渉には必要な場合もあるのです。

 以上のような私の立場をご理解いただければ幸いです。もちろん、批判ばかりではなく「提案型」の政治はこれからも続けていくつもりです。そうした発信をここでやっていくことも当然です。何度も言いますが、一つ一つのブログを取り上げて、起承転結を求め、「対案がない」と批判するほど安易な批判はないと思います。

 さて、その領土交渉ですが、先の山口での日露首脳会談の「内実」が、時を経て入り始めました。

 真偽のほどはわかりませんが、情報源からするとかなり信憑性のある話です。驚くべきことに、先の首脳会談でプーチン大統領と安倍首相が95分間差しで話したそうですが、そのほとんどがプーチン大統領からの「恫喝」に終始したというのです。

 「晋三!我々は武力で北方領土を勝ち取ったのだ。日本にその気はあるのか!」。そのあまりの勢いに、安倍首相から領土返還の話が切り出せなかったそうです。

 そもそも、安倍首相の言う「新しいアプローチ」とは、今井総理秘書官をはじめ「経済産業省」主導で考え出されたものです。当時から、外務省は「何が新しいだ、何もない!」と言っていました。

 そう、「新しいアプローチ」とは、まずは経済協力、要は「領土問題棚上げ」でしかありません。しかし、各紙とも「棚上げ」と書けなかったは、官邸からの圧力があったからというのです。

 つまるところ、今回の一連の交渉は、領土や主権、安全保障に敏感でない経産主導の失敗だった。今、ロシアに領土返還の意思はないし、ロシアは日米安保までも持ち出して支障があると言った。

 官邸内の、谷内安全保障局長ら外務省組と今井氏ら経産組の対立も深刻だそうです。安倍首相が首脳会談後、テレビに出まくってしきりに弁明したのは、また、来年早々の訪露を早速表明したのも、こうした内情を糊塗したいがためだったのかもしれません。

 たしかに、今回の日露交渉の失敗は、本来、外交安全保障を担うべき外務省がはずされて、経産省主導で「経済協力」が前面に出てしまったことにあると思います。

 ただ、同じ「経産主導」、いや「通産主導」でも、クラスノヤルスク合意(97年11月)の時は違いました。確かに、当初は官邸の「通産部隊」が「ユーラシア外交」という大きな戦略の下、「橋本3原則」(信頼・相互利益・長期的な視点)を打ち出した。

 しかし、当時の丹波外務審議官ら外務省組は、当初こそ不快感を呈したものの、「本来は我々外務省が打ち出すべき構想だった」と言って、その後の交渉は悪びれず外務省が担ったのです。

 当時、ロシアを巡る状況は深刻でした。経済困窮だけではありません。ベルリンの壁、ソ連崩壊以降、NATO(北大西洋条約機構)の東方拡大が進行していたからです。安全保障面で、従来、ロシアとの同盟関係にあった東ヨーロッパの国々が、西側陣営に与するようになっていた。

 こうしたロシアの「窮状」に乗じて、そのロシアをアジアの一国として扱おうというのが「ユーラシア外交」のミソでした。それにエリチィンは呼応した。そして、忘れてはいけないのが、独・コール首相の存在でした。当時、ロシアへの経済協力でエリチィンの首根っこを押さえていたコール首相が、橋本・エリチィンの仲介を買ってでてくれたのです。

 そう、今回の安倍・プーチン会談との、もう一つの大きな違いは、日露交渉で、第三国が日本側に立って協力してくれたことです。当時の米クリントン大統領の後押しもあった。

 しかし、今回の日露交渉に対しては、米国や欧州からは、協力・支援どころか、むしろ、日本への冷めた、いや厳しい視線が注がれていると言えるでしょう。今回の交渉結果が、ロシアへの「経済制裁に風穴」を開けたという理由でロシア側から評価されているように、クリミア問題で歩調を合わせている欧米からすれば、日本はむしろ何なんだということですから。

 今後、日本は、こうした国際場裡でオークワッドな(ぎこちない)立場に置かれるでしょう。ロシアからも領土問題で色よい返事をもらえない、かと言って、欧米からは経済制裁の歩調を乱した国として冷たい視線を浴びる。

 戦略のない安倍外交は、今後厳しい局面を迎えることになるでしょう。

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