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江田けんじ 衆議院議員 神奈川8区選出(横浜市青葉区・緑区・都筑区)

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シリーズ「安保法制」・・・③「重要影響事態」には際限がない!・・・周辺事態法の骨格は変えない

2015年6月15日  tag:

 今回の安保法制では、従来の「周辺事態法」が改正され、「重要影響事態法」となる。しかし、これまでの国会論戦でも、この「重要影響事態」という概念が、法理的、論理的には「地球の裏側」まで自衛隊を派遣して「後方支援」を可能にすることを排除していないことから、国民の間に大きな不安が広がっている。


 維新の党は、この「周辺事態法」について、基本的に現行の法的な枠組みを変更する必要はないと考えている。ここにいう「周辺事態」とは、「そのまま放置すれば我が国に対する直接の武力攻撃に至るおそれのある事態等我が国周辺の地域における我が国の平和及び安全に重要な影響を与える事態」をいう。実は、この法律は、小渕政権下で成立(99年5月)したものだが、その策定は、私がお仕えした橋本政権でなされた。当時、こうした安全保障の問題に大変ご熱心だった橋本首相が、自ら執務室に外務、防衛官僚を招き入れ、連日、逐条で法案作りに勤しんだ、その結晶である。


 確かに、この「周辺事態」という概念は「地理的概念」ではない、と国会等で累次、政府は答弁してきた。その通りなのだが、しかし、そこには自ずから「地理的制約」があることも当然の前提としていた。小渕首相も国会で「中東やインド洋、地球の裏側は想定していない」と答弁している。すなわち、この法律制定の必要性、その「立法事実」としては、明らかに中台危機(96年3月)や朝鮮半島危機(93年~94年)があった。にもかかわらず、「周辺事態」=地理的概念ではないとしたのは、いたずらに中国や韓国、台湾を刺激したくないという思惑があったからだ。こうした「日本周辺有事」に対処するため、米軍が日米安保条約第6条(極東条項)に基づいて展開する時、日本として何も協力しなくて良いのか、いや、その「後方支援」ぐらいはすべきではないか。そう、いわば、この第6条(極東条項)の「内実」を埋めるための新法だったである。


 だからこそ、この「周辺事態法」の目的には、「日米安保条約の効果的な運用に寄与」という文言がわざわざ入っているのである。それを、今回の法改正では「日米安保条約の効果的な運用に寄与することを『中核』とする」として、米軍以外、具体的にはオーストラリア軍も想定している。また、「極東」とは、「大体においてフィリピン以北、日本及びその周辺地域」とされていたのだが、それを法理的には「地球の裏側」まで拡げる。そして、後方支援の「支援」の内容も、「弾薬の提供」や発進準備中の「空中給油」まで含むことにする。


 ここに国民は大きな不安を抱いているのである。また、そうした「日本有事」あるいはその「危険が切迫」しているケースとはまったく無縁な地域にまで自衛隊を派遣し、「武力行使」と一体化するような協力をすれば、まさに日本と関係ない戦争に巻き込まれるのではないかという強い懸念もある。


 だからこそ、維新の党は、「周辺事態法」の基本的な骨格は変えないという方針を決定したのである。ただし、近時の核・ミサイル技術の進展等安全保障環境の変化に応じて、「周辺事態」の範囲は、従来の「フィリピン以北」という限定(これ自体、従来の政府の解釈でも「必ずしも前記の区域に局限されるわけではない」としてきた)を多少緩めても良いと考えている。現在、問題となっている南シナ海、南沙諸島についても、事態によっては「周辺事態」と解せる場合も皆無ではないだろう。


 また、「日米安保の効果的運用」、まさに極東条項(第6条)の発動による米軍の展開に日本としてどう協力するか、その「穴」を埋める、そうした法的性格を根本から変える今回の法改正には賛同することはできない。オーストラリア軍への支援もしかりである。


 そもそも「重要影響事態」とは、「極東」以外でどういう事態を想定しているのか?法改正の必要性、すなわち「立法事実」があるのか?南シナ海(南沙諸島)での有事に日本は協力するのか? どう協力するのか?こうした諸点について安倍首相から何ら説得力ある答弁がなされていないことからも尚更であろう。


シリーズ「安保法制」
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