安倍首相への代表質問(2)・・・アベノミクスの評価(第二の矢があらぬ方向に)
2015年2月23日 tag:
(アベノミクスの評価)
こうした維新の考え方をベースに、「アベノミクス」を検証してまいります。大事なことは、景気が本格的に回復し、現実に給料が上がり、国民生活が安定していくことです。
「アベノミクス」。その方向性自体には、維新の党は賛成です。しかし、考えてみれば、それは、これまで歴代政権等が取り組んできた政策を、一つのパッケージにまとめたという意味はあるものの、その政策自体に新味はありません。
唯一ありそうなのが「第一の矢」=「大胆な金融緩和」「物価安定目標の設定」ですが、これも安倍政権が誕生する三年以上も前、みんなの党が結成された時のマニフェストに書かれていたことです。旧日本維新の会も掲げました。当時は、「珍説」「奇説」の類と批判されたものですが、それを安倍総理が採用された。その結果、株価も上がり、円高も是正され、失業率も下がった。そこは率直に評価したいと思います。
しかし、この「金融緩和」は「カンフル剤」でしかありません。何本も打つものではありませんし、打ってもその効果は減殺されていきます。問題の根本的解決にもつながらない。昨年秋の二本目のカンフル剤は、増税失敗の影響緩和というやむをえない事情はあったものの、今後、三本、四本と打っていくと副作用、弊害も出てきます。総理、こうした金融緩和が行きすぎた場合の弊害を、具体的にどう認識されていますか?
デフレ脱却、本格的な景気回復には、「お金」だけでなく「モノ・サービス」、すなわち「実体経済」を動かしていく必要があります。金融緩和というカンフル剤で一時的に身体はシャキっとしますが、「体質改善」は手術をしなければ実現できません。その意味で、第二、第三の矢が重要となってきます。
その「第二の矢」=「機動的な財政政策」は、当たり前のことです。しかし、残念ながら、この「第二の矢」は「あらぬ方向」に飛んでしまいました。そう、端的に言えば「公共事業のバラマキ」に堕してしまった。
ここ数年、決算ベースで公共事業は例年の二倍、年一〇兆円にまで膨れ上がっています。しかし、そのうち二~四兆円を使い残している。一体何のための消費増税だったのか。あまりの「バラマキ」に消化不良を起こしている公共事業に頼っていても景気浮揚は望めません。政府は表向き認めていませんが、やはり、「国土強靭化」と称して「一〇年間で二〇〇兆円」もの公共事業をばらまくのではありませんか?
総理、「経済最優先」とおっしゃるなら、もっと国民の懐を温める政策、家計を潤す分配政策が必要でしょう。あれだけ我々が警告したのに、昨年四月、消費増税を強行し、国民経済の六割を占める消費が落ち込んでしまった。せっかくそれまではデフレからの脱却が進みつつあったのに、今や直近の統計で、デフレギャップは一五兆円にまで拡大してしまいました。これを埋めなければならないのに、来年度予算、補正予算とも、消費を喚起する政策、予算があまりにも少ない。
例えば、本予算では低所得者に六千円/人、子供一人当たり三千円を給付することになっていますが、この予算額がたったの二三〇〇億円。補正予算で講じた商品券等を交付する二五〇〇億円をあわせても五千億円程度でしかありません。「商品券」の効果も過去の「地域振興券」の例からして乏しい。加えて、増税先送りを口実に、七九〇万人の低年金生活者への月五千円の給付金や、保険料納付期間を二五年から十年に短縮する措置は見送られました。公共事業に何兆円も余らせる余裕があるのなら、なぜ、これら「見送り分」、せいぜい二千億円程度の財源が捻出できなかったのでしょうか。
ここは、やはり思いきって三・五兆円の補正予算全額を消費喚起策に充てるくらいの大胆さがあっても良かった。例えば、商品券ではなく、使途限定の保育バウチャーを子育て世帯に、福祉バウチャーをお年寄りに、直接交付する。そして、そのバウチャーを持って利用者が施設を選べるようにすれば、事業者間の競争でサービスの質も向上する。一挙両得です。総理、如何でしょうか?
なお、一〇%消費増税先送りの際、一七年四月からの増税は「景気条項」なしで必ず実施、とされたのはいだだけません。総理は今国会でも「経済は生き物であり、計画経済のようにがちがちに固めていくと、結果かえって悪くなることもある」と述べられました。まったくその通りです。財政運営も時々の状況変化に応じて適時適切に「経営判断」するのが基本です。維新の党も将来の増税を否定するものではありませんが、これでは昨年の増税失敗の反省がまったくありません。ご再考ください。(次週に続く)。
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