増税の反動減(▼年率6.8%)=大震災以来の落込み・・・12月には10%増税を決断
2014年8月18日 tag:
ここへきて、多くの景気指標が前回の消費税増税時(97年4月/3%→5%)より格段に悪化している。単なる「駆け込み需要」(1~3月期)の「反動減」ばかりとは言ってはおられない状況だ。日経新聞等を読んでいる限り、「強気の経営者」や「金融系アナリスト」の前向きなコメントばかりが目立つが、水面下では増税の影響が早くも出始めたという感じだ。
前回の消費増税時(3%→5%/97年4月)は、増税と減税がワンセットでプラスマイナスゼロだった。増税を閣議決定(94年9月)したのは村山内閣時で、そこから先行するところ3年間、景気に配慮して年間5.5兆円規模の所得・住民減税を行ったのだ。2%増税分は5兆円だから、家計の実質負担増はなかった。
その結果、経済成長率は、95年には2.2%、96年には3.6%のプラスになったし、株価は2万円を超えていた。しかし、97年秋の金融連鎖破たん(三洋証券→北海道拓殖銀行→山一証券)で一気に「金融収縮」が起こり、翌年から設備投資が激減し不況に突入したのだ。
背景には、金融機関の有する莫大な不良債権があった。それがタイのバーツ危機(97年8月)で破裂した。おりしも進めていた「金融ビッグバン」(金融規制改革)で、傾いた金融機関は救済しないという政府方針もそれを加速した。「経済は生き物でこわい」。私が痛感した一大事だった。
一方、今回の増税(5%→8%)後も、確かに今のところ、株価や為替レートは良好に推移している。が、「消費」「設備投資」「出荷」「在庫」「賃金・雇用者報酬」「輸出入」、どれをとっても数字が軒並み悪くなっているのだ。今回は根深い構造的問題もない。そうした中で、足元の景気が前回増税時より悪いという指標は深刻に受け止めなければならない。
やはり、「実質可処分所得」の落ち込みで「購買力」「需要牽引力」が落ちていることが大きい。元々「賃金」があまり上がらない中で、物価上昇と増税等による「家計負担増」で、実際家計で使えるお金が減っているのだ。
直近のGDP速報でも、そのとおりの数字が出た。4~6月期のGDP速報だ。以下は毎日新聞記事から。
「落込み幅は東日本大震災時の2011年1~3月期(6.9%減)以来の大きさ。今年4月の消費増税前の駆け込み需要の反動で、個人消費が過去最大のマイナスになったことが主因だ。設備投資や住宅投資も下落に転じており、1997年の消費増税直後(4~6月期で3.5%減)を大幅に上回る景気の冷え込みを示した。
サラリーマンや公務員が受け取った給料や報酬の総額を示す雇用者報酬は、今春の賃上げもあって4~6月期は前年同期比1.3%増となったが、物価上昇分を除くと2.2%のマイナス。増税に加え、ガソリン、食品などの値上がりで実質所得は目減りしており、想定以上に消費を押し下げた可能性がある。」
問題は先行きだろう。私が注目しているのが機械受注統計(設備投資の先行指標)で、この数字がこの5月、▼19.5%と史上最大のマイナスになったことだ。「消費」(GDPの6割)と設備投資(GDPの1.5割)の先行きが暗いなら、景気回復が「巡航速度」になることはない。
安倍首相は、7~9月期のGDP統計が出る11月中旬(速報値)~12月上旬(改定値)の数字をもとに10%判断を行うと言うが、「既定路線」は変更できないだろう。「谷深ければ山高し」。7~9月期の数字は前期比ではプラスになるのは確実だが、問題はその中身だ。「消費」や「設備投資」等の項目毎に慎重に分析しなければ折角のデフレ脱却、景気浮揚も「元の黙阿弥」になってしまう。この点も新党の大きな「対立軸」となりうるだろう。
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