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シリーズ:「集団的自衛権」を考える・・・⑧集団的自衛権を持ち出すまでもない(米艦防護や弾道ミサイル迎撃)

2014年6月23日  tag:

 与党協議に出されている事例では、日本海等における近隣有事、あるいは、その蓋然性が高い場合の「米艦防護」、さらには、米国向けの弾道ミサイル迎撃の例が取り上げられている。しかし、それは、とりもなおさず、時をおかずして米軍基地が多く所在する我が国に対する武力攻撃にも発展し得る事態と解さなければならない。


 従来の政府答弁でも、米艦防護の例だが、「わが国を防衛するために出動して公海上にある米国の軍艦に対する攻撃が、わが国に対する武力攻撃の端緒、着手として判断されることがあり得る」(2003年5月16日、衆院安全保障委員会、秋山内閣法制局長官)とされている。


 北朝鮮のノドンミサイルが200発以上、日本に向けられているという状況の下で、米艦だけが日本近隣でシングルアウトされて攻撃されるという事態は考えられず、その作戦遂行上、当然、そうなれば猛反撃を受けるであろう在日米軍基地にも、同時多発的にミサイル攻撃がされる、あるいは、その蓋然性が極めて高いと判断すべきであろう。仮にそうなれば日本をも巻き込んだ全面戦争さえ想定される事態である。であるならば、米艦への武力行使を「我が国への武力行使の着手」と見なして(評価して)、それに応戦する、その米艦を防護するのは「個別的自衛権」の範囲と解すべきである。


 また、従来の政府解釈でも、例えば、北朝鮮が「東京を火の海にするぞ」と宣言してミサイルに燃料を注入した段階で、「坐して死を待つ」のではなく「先制的」にそのミサイルを叩くことはできるとしている。最近の軍事技術の進展等で「先制的」に自衛のための武力行使をしなければ「坐して死を待つ」ことになる事例が増えてきており、この「先制的自衛」という概念(「個別的自衛権」の範囲)で容認される場合もあるだろう。


 また、集団的自衛権の行使の例として、米本土やグアム、ハワイに向けた弾道ミサイルの迎撃や、わが国近隣で作戦を行う時の米艦防護を取り上げているが、これこそ「机上の空論」「架空事例」の最たるものであろう。


 まず、どこの国が、米国本土であろうが、グアム、ハワイであろうが、武力攻撃を仕掛けるのかという議論はさておき、そのような事態に仮になれば、それは、在日米軍基地を含む日本とも全面戦争に陥っている状況であろう。どこの国のどこの軍司令官が、米本土やグアム、ハワイだけ弾道ミサイルでねらって、そうなれば総反撃をうけるであろう在日米軍基地を同時に叩かないという選択をするだろうか。したがって、このような状況下での日本の武力行使は当然、個別的自衛権に基づく反撃で可能となる。


 なお、万一、そういう状況にない場合があるとしても、わが国上空を横切りグアムやハワイに向かう弾道ミサイルの発射は、いやしくもわが国上空を横切る以上、それ自体がわが国への急迫不正の侵害(少なくとも武力攻撃が発生する明白な危険が切迫している=防衛出動の要件)と解し得るだろう。


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