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江田けんじ 衆議院議員 神奈川8区選出(横浜市青葉区・緑区・都筑区)

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米ロ、シリアの化学兵器廃棄で合意・・・武力行使回避を歓迎

2013年9月17日  tag:

 シリアへの武力攻撃はとりあえず回避された。米ロでシリアの化学兵器の廃棄への道筋が合意されたからだ。これに伴い、シリアは化学兵器禁止条約に加盟した。

 私は、率直に、こうした外交努力で武力行使という最悪の事態が避けられたことを評価したい。ロシアもたまには良いことをする。また、米国も、議会や国内外の世論との関係で追い詰められていたとはいえ、一旦振り上げたこぶしを、メンツを度外視して下ろした、その決断に敬意を表したい。

 確かに、シリア政府が本当に化学兵器を使用したのなら言語道断で、絶対に許される行為ではない。それに対する国際的な制裁、今後の使用抑止のための手段を講じるというのは当然だ。しかし、武力行使ともなれば、ここは、あのイラク戦争への反省の上にたって、あくまでも国際法規、その秩序にのっとって冷静に判断しなければならない。

 また、国連の調査団が派遣され、今、その結果の分析が行われているのなら、少なくとも、その結果を待っても遅くはなかっただろう。イラク戦争の時も、国連の大量破壊兵器査察団が「あと数か月で査察は終わる」と言っていたのに、それを無視して武力行使し、結果、大量破壊兵器は存在しなかったという大失態を演じた。イラク戦争が「間違った戦争」と称される所以だ。

 その意味で、この一連の流れの中で、安倍首相がオバマ大統領に、あくまで武力行使には国際的合意、すなわち、国連決議を求めたのは正しい判断だった。国際社会では、武力行使が正当化されるのは、「自衛戦争」か「国連決議がある場合」に限られる。

 また、反体制側に化学兵器が一部渡ったという情報もある中で、実際に、シリア政府側が化学兵器を使用したのか否か、そうした情報収集にも政府は日頃から万全を期すべきだ。米国からの情報を一方的に盲信してはならない。私も官邸時代、米情報機関から直接ブリーフを受けたことがあるが、米国のインテリジェンスといってもそれが完全ではないことはイラク戦争で証明されている。

 今回の事態のように、化学兵器が使用される、コソボのように「民族浄化」が行われる、そうした人道上極めてゆゆしき事態が起こっている時に、それを理由に人道介入(武力行使)を行って良いのか否か、そうした論点があることは私も認める。しかし、それが成熟した、定着した国際法規となっていない以上、ある一国の、特定のグループ国の判断で、なし崩し的に既存の国際秩序を乱すべきではないだろう。それは必ず将来に禍根を残す。

 また、今回、仮に米国が限定的な武力行使をしたところで、その後のシリアの情勢はどう推移していくのか。地上戦はやらない、武力行使は何十日間とあらかじめ期間を限る、アサド政権を倒すわけではない、そうした中で、反政府勢力もまちまち(四分五裂)で、一部はあのアルカイダ系とも言われている。「ヒット アンド アウェー」では、確かに今後の化学兵器使用の抑制効果はあるだろうが、それだけだ。内戦状態が終結するわけでもない。いや、益々シリア国内の情勢が混乱を極め、罪のない人々の命がさらに失われるということにもなりかねなかった。

 だからこそ、今回の合意は、その化学兵器廃棄の実現とその検証可能性、時間稼ぎ等々の問題は指摘できようが、やはり、外交努力でこうした想定される一連の事態が当面回避されたという意味で、大変喜ばしいことだ。もちろん、今後の事態の推移を厳しく監視していくべきなのは当然のことだ。それにしても、こうした仲介を日本が担えれば一番良かったのだが、今の日本の外交能力では、残念ながら望むべくもなかった。

 それにしても、日本では、イラク戦争の総括すら、ろくにされていない。あの米国や英国ですら「間違った戦争」と結論付けた戦争、それを平気で支持し、自衛隊までイラクに派遣した政治家たちが、何の反省もなく、今回もいち早く「米国が武力行使に踏み切るなら支持すべきだ」とのたまう。そして、そうした輩が日本では「安全保障の専門家」「政界きっての論客」と称される。こうした事実が、日本の政治やメディアの、安全保障レベルの低さを雄弁に物語っているのではないだろうか。

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