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シリーズ/今一度、消費税増税を考える ・・・①前回増税時との決定的違い」

2013年9月22日  tag:

 安倍首相が来年4月からの消費税5%→8%増税を決断した。前回、橋本政権の首相秘書官として、つぶさに増税時(3%→5%)の現場に立ち会った者として、今一度、警鐘をならす意味で、これからシリーズで、この問題を考えていきたい。

 橋本内閣は、1997年4月から、消費税を3%から5%に引き上げた。今回の増税との決定的違いは以下のとおりである。

 当時は、増税と減税は一体で実施し、国民負担という点ではプラスマイナスゼロだった。景気に配慮して、増税に先行して3年間、年5・5兆円規模(うち恒久減税3.5兆円、特別減税2兆円)の所得・住民減税を行い、その結果、経済は、95年には2.2%成長、96年には3・6%成長(当時の統計)を達成していた。株価はなんと2万円を超えていたのである。

 3%から5%への増税自体は、94年秋、村山内閣時の決定だった。その既定路線を転換するだけの状況ではなかったということに尽きる。メディアも世論も増税、そして構造改革断行の大合唱だった。仮にあの時、橋本首相が増税見送りの決断をしていたら、確実に内閣支持率は急落しただろう。

 しかし、増税の半年後、97年秋に起こった金融連鎖破綻が誤算だった。サンヨー証券の破綻に端を発し、北海道拓殖銀行、そして、あの4大証券の一角、山一證券までが自主廃業にいたったのだ。一部銀行では取り付け騒ぎまで起こった。

 その結果、金融パニック、金融収縮が起き、それが原因で企業の設備投資が激減して不況の引き金をひいた。ただ、指摘しておきたいことは、この間も、GDP上、増税の影響を直接受ける「消費」は伸びていた。

 それに引きかえ、今回は増税だけが国民に大きな負担増(8兆円)としてのしかかる。大和総研の試算によると、復興増税、扶養手当て等の負担増をあわせて、年収500万円世帯で年間30万円強、800万円世帯で40万円強に及ぶ。

 安倍政権は、今年の4月~6月期、1四半期だけののGDPが年換算で3・7%になっただけで喜んでいるようだが、通年ベースでしっかり需要項目ごとに分析し、日本経済がデフレから脱却し、成長が軌道に乗って巡航速度になるまで増税は凍結すべきだろう。増税を1~2年延期したところで、国債が暴落して金利が急上昇することは絶対にない(次回)。

【解説】①前回増税時との決定的違い(シリーズ消費増税)

◆前回増税は「村山内閣時の決定」
 →閣議決定(94年9月)法案成立(同11月)

◆「97年秋に起こった金融連鎖破綻」
 →三洋証券は、戦後初の10億円のデフォルトで破綻。当時「金融ビッグバン」を断行中であえて救済しなかった。それまでの「護送船団行政」では、10億円程度の資金は「奉賀帳方式」で日銀や大蔵省が救済したものだ。
 この結果、元々資金繰りが苦しかった北拓が市場からお金がとれなくなって破綻。ここまでは想定済。現に、北拓破綻の日の市場で株は上がった。やっと日本も不透明な大蔵省による金融行政(護送船団行政)と本当に訣別したという市場の評価。
 ただし、唯一の誤算が山一証券の破綻。この自主廃業をめぐっては大蔵省の陰謀説が消えない。当時進行していた行革論議「財政と金融の分離」を阻止するため、あえて「金融パニック」を起こし、やはり金融行政は財政出動権限を持つ大蔵省に置いておか  なければならないということを自ら証明してみせたというのだ。そうなら「国家的犯罪」だ。長期のデフレは大蔵省が戦犯ということになる。

◆「この間もGDP上、増税の影響を直接受ける消費は伸びていた」
 →97年第一四半期(1月~3月)は、消費税の5%引き上げを目前にしての旺盛な「駆け込み需要」で、予想通り年率換算10%以上の高成長を達成し、第二四半期(4月~6月)は、その大幅な反動減で、これまた10%を上回る率で景気は落ち込んだ。「個人消費」の数字に、それは端的に表れている。ここまでは想定どおりだ。
 しかし、注目された第三四半期(7月~9月)は、名目で2.5%(実質1.9%)と、経済はプラス成長(前年同期比)に転じている。消費税アップの影響が心配された個人消費も名目で2.3%(実質1.0%)も伸びているのだ。一つの仮説だが、その後、第四四半期(10月~12月)に相次ぐ金融連鎖破たんがなければ、日本経済は「巡航速度」に戻っていった可能性も十分にあったと言えよう。
 そして、その破綻が続いた第四四半期さえも、名目1.0%(実質0.2%)のプラス成長をしていたのだ。ただ、年が明けて、その次の四半期(98年1月~3月)は一転してマイナス成長(名目▲1.5%/実質▲2.3%)、それまで堅調だった設備投資が「金融収縮」で大幅に減少したのが大きな要因だ。これが不況の引き金を引いた。

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