みんなの党は、熟慮の結果、今回の10兆円超の補正予算には反対した。簡単にいえば、補正の必要性や10兆円という規模には異存はないものの、その中味に問題が多すぎるということだ。
まず、5兆円規模の公共事業の選定が杜撰すぎる。みんなの党も、先般のトンネル崩落事故に象徴されるような「維持・補修・管理」や小中学校の「耐震補強」のような公共事業には大賛成だ。しかし、予算委の場で散々問いただしてやっと出てきた答えが、それに相応する事業費がたったの0.6兆円。2.4兆円の公共事業費の1/4でしかないことが判明したのだ。
その他は不要不急の役所の施設整備費等が占める。例えば、農業関係の独立行政法人は、通年予算の何十倍もの補正を組んで、施設建て替えを20か所も行う。「ミッシングリンク対策」「農業土木2900億円」等に「土建利権政治」「業界・部会政治」の復活もみられる。
「夢よもう一度」、産業再生機構の成功に味をしめた役所が、智恵がないものだから、やたら「官民ファンド」という手法を駆使し、見た目、積算を積み上げた。官主導で成長分野にリスクマネーを供給するというお題目は良いが、要は、天下りなど官の肥大化につながる市場への過剰介入だ。「官の目利き」が通用する世の中では既になく、麻生政権時代に42もの官民ファンドを積んで2兆円超余らせたという会計検査院の報告もある。
たとえば、林業対策と称して、かねて会計検査院に問題を指摘されてきた年間予算5億円の事業にその100倍、550億円の基金を積む。農林中金OBが天下る組織に、わざわざ農林水産業の経営支援と称して100億円の追加出資をする。本来農林中金自身がやればいいだけの話だ。こうしたおかしな事業が次から次と出てくる。基金への出資金であれば建設公債の対象になると言う事情も背景にはある。要は財源が出しやすいというだけの話だ。
いずれにせよ、経営や経済の現場にいたことのない役人にこれからの成長分野やベンチャー企業を見出だす目利き、能力があるのかという根本的疑問があり、運用を間違うと焦げ付きで国民負担、民業圧迫や政府系金融機関の生き残り、役人の天下りや「ゾンビ企業」を生んだだけということにもなりかねない。
一方、復興を加速する予算は極めて不十分だ。補正では、そのために1.6兆円を配分しているが、そのうち1.3兆円は「来年度の復興財源の追加」であり、学校の耐震化等緊急度が高い事業には3177億円しか計上していない。みんなの党は、そうした使い途のわからないお金を積むぐらいなら、その1兆円分を「被災地交付金」として、被災地に自由に使っていただきたいという提案をした。
補正の5兆円と本予算の5兆円、あわせて10兆円もの公共事業をばらまくことで、その執行が大丈夫かという深刻な問題もある。そうでなくても、建設業は年々の公共事業の削減で従業者数は大幅に減少している。それを担当する自治体職員も同様だ。一部報道では全国の建設業者の35%、被災地では64%が人出不足だという。特に被災地では、人材不足、資材不足で復興の足かせとなっているところ、こうした公共事業の全国展開で、より一層復興を妨げないか大変心配だ。
以上の問題点を是正するため、みんなの党は補正予算の組み替え動議を提出した。先述した1兆円の「被災地交付金」の創設や、ばらまき公共事業を「維持・補修・管理」中心に抜本的に見直し2兆円を削減する。「官民ファンド」の代わりに、民間設備投資促進のための「投資減税」を創設、民主党時代に削減された科学技術振興費も復活し、あくまで民間主導の自律的な経済成長を促していく。
ただ「反対」では無責任なので、その対案を示しつつ、それが否決されたので最終的に反対に回ったのである。今後も、こうした「提案型」の国会対応で、少しでも政府与党の政策をより良い方向に向けられるよう努力していきたい。
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