もう少し、具体的な問題点を見て行こう。先週述べたように、「金融緩和」も「公共事業」もカンフル剤で一過性、景気
回復を持続可能にするのは規制改革をはじめとする「成長戦略」だ。ただ、そのカンフル剤にも問題の芽をはらんでいる。
まず、「財政の機動的運営」と称して、公共事業バラマキの芽が盛り込まれていることだ。何度も言うが、我々みんなの党も、この前のトンネル崩落事故に象徴されるような「維持・補修・管理」や小中学校の耐震補強工事のような公共事業には大賛成だ。
しかし、そうした美名のもとに、自民党は「大規模プロジェクト」や無駄な事業に走りがちだ。具体的には、補正予算の
中に、「ミッシングリンク」であるとか、港湾・空港に2100億円、農業土木に2900億円等が盛り込まれていることだ。これは
「土建利権政治」「業界・部会政治」の復活ではないのか?
考えてもみてほしい。補正予算案に盛り込む5兆円強の公共事業費は、12年度当初予算の公共事業費4.7兆円を
上回る規模だ。内々霞が関官僚に訊いてみても、その積み上げ、積算に四苦八苦しているのが現状だ。復興関係でも、
相変わらず、被災地以外への流用も見受けられる。そもそも復興予算の対象を全国に広げた犯人は民主党ではなく
自民党だった。補正予算の中身はしっかり精査し、監視していきたい。
さらに、この補正、本予算あわせて10兆円の公共事業を執行していくのも並大抵のことではない。被災地では、既に、執行のための人材、資材不足が復興の足かせになっている。これを全国で展開するとどうなるか。より一層復興を妨げる要因になるのではないか。
建設業の有効求人倍率は他産業と異なり、全国で1~2倍、そう求人の方が多いのだ。それもそのはず、年々の公共
事業の削減で、ピークで685万人いた建設従業者数が今や500万人。執行関係の自治体職員も同様の事情で、資材費も
人件費も急騰しているのが現状だ。それが被災地での除染の手抜きや瓦礫処理の遅れを招いている。
また、今回の補正でも活用された「官民ファンド」も単なる「ブタ積み」に終わる可能性が高い。政府が、これからの成長分野や、成長できるベンチャー企業を見出だして投資する、リスクマネーを国の信用力付与で引き出すと、一見、良さそうには思えるが、経営や経済の現場にいたことのない役人に、そもそもそうした目利きや能力があるのか。ひとたび、その運用を間違うと焦げ付きで国民負担も招来する。 また、民業の圧迫や政府系金融機関の生き残り、役人の天下りの
ポストを増やしただけ、「ゾンビ企業」を生んだだけともなりかねない。
麻生政権時代にも、こうした官民ファンド46に4兆円超の予算を組んだが、結局、使い残しが2兆円にものぼった。補正を早く作れと政治から言われれば役人は作るが、智恵がないため、こうした安易な方策に走る。その結果がこの使い残しであり、効果がない成長戦略でしかない。出資金であれば、建設公債の対象となるからという理由も背後にあるだろう。
「地域の元気臨時交付金」(1.4兆円)も、バラマキと言われないためには自治体にしっかりとした中長期ビジョンを作成させ計画的に行うべきだ。そうじゃないと、自治体によっては、この裏負担を良いことに、無駄な目の前の工事に飛びつきかねない。
いずれにせよ、今日から開会する通常国会では、真の景気下記服を実現し、経済を持続的な成長路線にのせていくことを最優先に、安倍政権の経済・金融政策を厳しくチェックするとともに、我が党の政策を積極的に提言していきたい。
Copyright(C) Kenji Eda All Rights Reserved.