シリーズ/財務省の増税マインドコントロールを暴く!・・・⑤「歳出は90兆円超なのに税収は40兆円そこそこ。新規の借金は44兆円でこれで財政がもつわけがない」
野田首相や安住財務相、前原政調会長らが、「なんとかのひとつ覚え」のように繰り返すセリフだ。まさに、財務省の
振り付けどおりの発言と言ってよい。一言でいえば、自分たちのことを棚にあげてよく言えたもんだ、ということだ。
確かに、一般会計予算の数字だけみると、彼らが言っていることは正しい。平成24年度予算でいえば、歳出は93兆円(基礎年金の国庫負担を1/2にするつなぎ国債分を含み、復興特会の3兆円は除く。)なのに、税収は42兆円、新規国債
の発行額は44兆円だ。
私も、こうした一般会計の姿が健全とは言わない。いや、むしろ、こうしたいびつな姿を少しでも改善していかなければ
ならないと考えている。ただ、そのやり方が「増税」だけではないと言っているのだ。やり方は「歳出減」と「歳入増」しか
ない。増税は後者の一手段でしかない。
まず、「歳出減」から考えよう。確かに、今年度予算の歳出規模は93兆円だ。しかし、つい5年前、自民党政権時代の
平成19年度予算の規模は82兆円だった。実にこの5年間で11兆円の歳出増である。たしかに、毎年の社会保障の自然
増は約1兆円あるから、5年間で約5兆円。ただ、この分を差し引いても6兆円ほど増加している。また、2008年のリーマン
ショックで麻生政権は緊急対策を打っているから、この分の増はあった。しかし、そのベース、88兆円と比較してもなお
5兆円増えているのだ。そう、民主党政権のバラマキの結果である。
あろうことか民主党政権は、その政権交代マニフェストで予算を抜本的に組み替えて16.8兆円の財源を捻出してみせると豪語しながら、前政権の麻生政権の予算に一切切り込むことなく、なんと、そこに「接ぎ木」して、4Kをはじめとした自らのバラマキ予算を単純に上乗せしたのである。水ぶくれするのは当然だ。
新規国債発行額にしても、小泉政権時代には、「新規国債発行枠30兆円」と当時の小泉首相が叫んでいたことは記憶に新しいだろう。それが、政権交代前には33兆円になり、麻生政権で44兆円に、民主党政権は、その借金枠を減らすどころか、そのまま受け継いだのである。ちなみに、今回の増税後も、この44兆円枠は減らさない、というのが国会での野田政権の答弁だ。何のための増税か、ということだ。念のためにいうと、ここまでの数字に大震災の復旧・復興予算は入れていない。突発的な支出だからである。したがって、まずは増税の前に、この93兆円の歳出終規模の圧縮をしろと言いたい。
次に、歳入増だが、増税でそれを図る前に、経済成長と「埋蔵金」の活用を考えろ!ということだ。
税収は1990年には60兆円あった。それが今や42兆円にまで減っている。私もバブル時のような高税収を目指せとは
言わないが、前回の消費増税時(97年)の税収(54兆円)ぐらいを目指して、名目成長をあげる努力をするべきだろう。
その方策は別稿に書いたのでここでは省略する。また、埋蔵金でいえば、国債整理基金の10兆円超の積立金や雇用保険特会の4兆円程度の剰余金を活用すべきだろう。さらに付け加えれば、私が累次、国会で追及してきた「減債制度」の廃止をすれば、今年の新規国債発行額も一気に44兆円が34兆円に減少する。
そうすれば、増税しなくても、一般会計の姿はずいぶん変わってくる。歳出は87兆円(93兆円)で歳入は54兆円(42兆円)、新規借金は34兆円(44兆円)。これで健全とは言わないが、増税しなければ予算が組めないというレベルではないだろう。
要は、こうした議論や検証が一切なされないままに、標題の言辞だけで増税が正当化されてしまった、ということが
大問題なのである。
※江田けんじの拙著「財務省のマインドコントロール」はこちら
【今週の直言】
シリーズ/財務省の増税マインドコントロールを暴く!・・・①「財務省がそんなに強ければ、こんなに財政赤字は膨れ上がってはいない」
シリーズ/財務省の増税マインドコントロールを暴く!・・・②「歳入庁構想、自民・財務省の連合軍に見事に葬り去られる」
シリーズ/財務省の増税マインドコントロールを暴く!・・・③「国の借金は1000兆円でGDPの二倍。増税待ったなし!」
シリーズ/財務省の増税マインドコントロールを暴く!・・・④「ギリシャの教訓は『増税したら国家破綻』」
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