歴史の証言/消費税3%から5%への道程・・・⑤「歴史の証人」としての叫び
2012年5月 1日 tag: 増税
私は、これまで述べてきたように、97年の消費増税へ至る過程を、総理側近としてつぶさに経験することができた。
そして、その光と影を、「経済は生き物だ」ということを、心底から体得してきたつもりである。
だからこそ、私は言いたいのだ。私が今、「消費税増税」に反対しているのは、決して、次の選挙を心配しての
ことでないことはもちろん、どこかの政治グループのように政局や権力闘争のためのものでもない、ということを。
あの時は、増税のために、丁寧な丁寧な手続き、プロセスを踏んだ(このシリーズ①②参照)。にもかかわらず、
生き物である「経済」から、大きなしっぺ返しを喰らった。しかし、今の消費税増税論議はどうなのか?
※ ①「既定路線」で「景気に最大限配慮」
※ ②痛みを伴う「5大改革」を表明
今、我々の目の前にあるのは「ユーロ(金融)危機」であり、「大震災と原発事故で苦しむ日本(経済)」だ。前回が、
増税後の予見しがたい事情により、その後の経済が大きく躓いたのに比し、今回は、実際に、我々の目の前に深刻な
危機があるのだ。
そうした事態を目の当たりにしながら、それでも一直線に増税に突き進む神経が私には信じられない、まさに
「クレージー」(MITレスターサロー教授)、歴史上稀にみる愚策だと言っているのである。
特に、今回の消費増税は、「復興増税」や「こども手当の所得制限(2012年6月からの住民税年少扶養控除廃止)による負担増」などが同時に加わるため、大和総研の試算によると、年収500万円世帯(40歳以上で片働きの夫婦と小学生
二人)で31万4400円の負担増(うち消費増税分は16万7600円)、800万円世帯で41万2400円(同25万円)、1000万円世帯で
58万8400円(同29万200円)となり、少なくとも国民全体で14.2兆円の負担増と推計されているのだ。
これは、97年当時の「9兆円の負担増」を大きく上回る。しかも、日本を取り巻く経済の状況や国際的な危機には、
前回と今回とでは彼我の格差がある。こうした増税に「不都合な真実」にあえて目をつむって、「何が何でも増税」路線を
突っ走り、日本という国がいよいよ破滅への道を歩むようなことになれば、一体誰が責任をとると言うのだろうか。
だから私は「歴史の生き証人」の一人として訴えているのだ。「増税の前にやるべきことがあるだろう!」、これは
「ポピュリズム」でも何でもなく、ましてや「政治屋は次の選挙を考え、政治家は次の時代のことを考える」といった次元の
問題でもなく、真剣にこの国の将来を憂える一政治家の「心からの叫び」なのだ。
(江田けんじ著書「財務省のマインドコントロール」より)
【今週の直言 シリーズ】歴史の証言/消費税3%から5%への道程
①「既定路線」で「景気に最大限配慮」
②痛みを伴う「5大改革」を表明
③「増税」を訴えて選挙に勝った
④不況突入の原因は消費増税ではない!
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