歴史の証言/消費税3%から5%への道程・・・④不況突入の原因は消費増税ではない!
2012年4月23日 tag: 増税
さて、この97年4月からの消費税2%増税を含む「9兆円の負担増」が、日本経済を大不況に突入させたという論がよく
聞かれる。しかし、この消費増税が、「9兆円の負担増」が、景気の足を引っ張り、その後の不況に突入していったという論にはどうしても賛成できないのだ。
それは、当時のGDP統計(平成7年基準)を見ればわかる。97年第一四半期(1月~3月)は、消費税の5%引き上げを
目前にしての旺盛な「駆け込み需要」で、予想通り年率換算10%以上の高成長を達成し、第二四半期(4月~6月)は、
その大幅な反動減で、これまた10%を上回る率で景気は落ち込んだ。「個人消費」の数字に、それは端的に表れている。ここまでは想定どおりだ。
しかし、注目された第三四半期(7月~9月)は、名目で2.5%(実質1.9%)と、経済はプラス成長(前年同期比)に転じている。消費税アップの影響が心配された個人消費も名目で2.3%(実質1.0%)も伸びているのだ。一つの仮説だが、
その後、第四四半期(10月~12月)に相次ぐ金融連鎖破たんがなければ、日本経済は「巡航速度」に戻っていった可能性も十分にあったと言えよう。
そして、その破綻が続いた第四四半期さえも、名目1.0%(実質0.2%)のプラス成長をしていたのだ。ただ、年が明けて、その次の四半期(98年1月~3月)は一転してマイナス成長(名目▲1.5%/実質▲2.3%)、それまで堅調だった設備投資が「金融収縮」で大幅に減少したのが大きな要因だ。これが不況の引き金を引いた。
だから、不況を招いた最大の要因は、消費税を5%に上げた後、97年秋に起こった「金融連鎖破たん」、特に山一證券の破綻だったと私は考えている。いや、私だけでなく、多くの経済学者が、当時の分析に基づいて同様の結論を出して
いる。この山一証券破たんが「金融パニック」を招き、一気に金融が収縮した。これを引き金に設備投資が激減し、日本
経済は奈落の底に落ちていくのである。
ただ、この山一証券の「自主廃業」については今でも謎が多い。破たんのプロセスが極めて不透明で、官邸の中からは、当時、議論されていた「財政と金融の分離」(大蔵省から金融行政を独立させて金融庁を設立)をつぶすために、
大蔵省が仕掛けた「クーデター」ではないか、との声があがったほどだ。金融パニック、恐慌を起こせば、やはり金融行政はいざという時の財政出動をつかさどる大蔵省の下にあるべきだということを、当時の大蔵省が身体をはって証明して
みせたというのである。(江田けんじ著書:「財務省のマインドコントロール」より)
【今週の直言 シリーズ】歴史の証言/消費税3%から5%への道程
①「既定路線」で「景気に最大限配慮」
②痛みを伴う「5大改革」を表明
③「増税」を訴えて選挙に勝った
Copyright(C) Kenji Eda All Rights Reserved.