歴史の証言/消費税3%から5%への道程・・・②痛みを伴う「5大改革」を表明
2012年4月 9日 tag: 増税
この消費増税プロセスには、この景気への配慮(3年間の先行減税等)に加えて、96年9月の「橋本5大改革」の表明があった。「5大改革」とは、「行政改革(官邸機能の強化、霞が関半減等の省庁再編)」「財政構造改革(メリハリのある
歳出改革)」「金融ビッグバン(護送船団行政との決別)」「経済構造改革(規制改革)」「社会保障制度改革(介護保険の創設等)」をいう。
「改革なくして消費増税なし」。今で言う「我が身を切る、痛みを伴う改革」を国民に約束したのだ。その背景には、消費増税の税率5%への引上げ方針が「社会保障や行財政改革の検討結果をふまえ、必要に応じ引上げの半年前の96年
9月までに見直す」とされていた事情もあった。
ただ、96年1月に発足した橋本政権は、前村山政権から引き継いだ二つの重要課題、すなわち、「住専問題」と「沖縄
問題」に忙殺されていた。そこで、これらの課題に、「6850億円の公費投入」と「普天間基地返還合意」等で一区切りを
つけた同年9月11日、橋本首相は、ついに「変革と創造」を掲げた内閣として攻勢に転じたのである。特に「行政改革」
「中央省庁の再編」について、橋本首相は、日本記者クラブで、以下ような演説を行った。
「今年を構造改革元年と位置づけ、政治、行政、経済、社会、より抜本的な構造改革を実行しなければならない」とした上で、「来年4月から消費税率を5%に引き上げることには、今、さまざまなところがら反発が起きており、大胆な行政改革による行政の簡素化、効率化を行わなければ国民の理解は得られない」「今こそ政治が強いリーダーシップを発揮し行政改革を断行していくべき」とした。
そして、具体的には、「これまで規制緩和や地方分権、特殊法人改革などの諸課題に着手し一定の成果。いよいよ
行政改革の本丸とも言うべき中央省庁の在り方自体を白地から見直すべき」「最も今必要なのは、縦割行政の排除と国民本意の行政を目指した霞ヶ関の改革」「二十二省庁を国家機能の分類に応じて半分程度にすべき」とした上で、「行政改革会議発足後一年以内に成案を得て、平成10年の通常国会に所要の法案を提出し、遅くとも5年以内、できれば21世紀が始まる2001年1月1日に移行を開始したい」と表明したのである。
一年間かけて、今でいう「官僚主導から政治主導(官邸機能の強化や人事制度の一元化)」「中央省庁の再編(霞が関の半減)」「行政の透明化と自己検証(行政情報公開法の制定や主要政策の第三者評価、監査制度の導入)」等を行うことを約束したのだ。当時、橋本首相の改革にかける意気込みは「たとえ火だるまになってもやり抜く」という首相自身の言葉に象徴されていた。
確かに、その実現した改革の中身については、論者によっていろいろ意見はあろう。私自身も、特に「中央省庁の再編」については、当初の目論見どおりいかなかった点があることも認める。しかし、今の民主党政権のように、約束したことを、その内容においても、期限においても、ことごとく守らないといった体たらくとは根本的に異なっていたということだけは指摘しておきたい。
中には、今でいう「国家公務員の総人件費カット」等が不十分だったとの批判もあるが、ひと口に「行政改革」と言っても、その時々の内閣によって、その重点課題は異なるものだ。当時は、湾岸戦争や阪神淡路大震災等を受けて、官邸
機能の強化、特に、縦割り行政を廃し危機管理体制を整備することが強く要請されていた。そして、それは24時間体制の「官邸危機管理センター」の設置や、後に小泉政権時代、力を発揮することになる「経済財政諮問会議」の創設等で結実したのである(次週に続く)。
【今週の直言 シリーズ】歴史の証言/消費税3%から5%への道程
①「既定路線」で「景気に最大限配慮」
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