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江田けんじ 衆議院議員 神奈川8区選出(横浜市青葉区・緑区・都筑区)

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財務省の財政破綻/増税キャンペーンの嘘を暴く・・・③国債(借金)は将来世代、子や孫たちへのつけ回しか?

2012年1月30日  tag:

 まず、基礎的なところからいこう。「目からウロコ」「コロンブスの卵」的な話だ。

 よく「国債(借金)は将来へのつけ回しだ」「我々(現世代)が楽して子や孫たちに負担を押し付けてはいけない」等々と言われる。こう言われると、今の世代は何か罪悪感まで感じてしまう。そのせいもあるのか、国民もメディアも完全に「思考停止」して、それを当然の前提として、財政再建や増税の問題を議論している。財務省の「マインドコントロール」の最たるものだ。

 しかし、その「嘘」は、少し考えればすぐわかる。具体例で考えよう。

 今、100万円の借金を、国が国民からするとする。具体的には100万円の国債を発行して国民に買ってもらう。当然だが、100万円分のお金が「国民」から「国」に移る。この時点で、バランスシートで言えば、国には「100万円の負債(借金)」、国民には「100万円の資産(公債券)」が計上される。

 この国債は、今の財務省の運用では「60年間で償還」する建前になっているから、今から60年後、この借金を国が返すために、「100万円の増税」をするとすれば、その将来世代の負担は、たしかに増税で100万円増えるが、その増税のお金を使って国債を償還するから、その100万円はそのまま、その将来世代の国民に払われる。

 したがって、「国民」にとっては差し引きゼロで、何も負担が増えるわけではない。これでどうして「国債(借金)は将来へのつけ回し」「子や孫たちの負担」になるのか。

 賢明なる読者はもうおわかりのように、ただ、ここには一つの「大きな前提」がある。そう、あくまで国債は日本の「国民」が買うという前提だ。よく、「日本の国債の消化は95%までが内国民」だから心配ない、と言われるのは、こういうことなのだ。

 これが、外国人により国債が買われているとなると事情はまったく異なってくる。上の例でもう一度考えてみよう。

 理解のため単純化すると、上の例で日本が発行する100万円の国債を外国人が全部買うとする。それを60年後、増税で返すとすると、その将来世代の負担は増税で100万円だが、そこで得たお金は外国人に償還されるから、差し引き、国民の負担増は100万円である。だから、この場合は財務省が言うように現世代ではなく将来世代、「借金は子や孫たちの負担」になるのだ。

 だから、ギリシャは危ないのだ。95%の国債を日本人自らが引受けている日本とはまったく違う。ギリシャの場合、その国債の75%は外国人が買っているのだ。「ギリシャは対岸の火事ではない!」「このままだと日本もギリシャの二の舞になる!」と財務省やメディアは国民を脅すが、この一点をもってしても(これ以外にも日本とギリシャの違いは多々ある。後に詳述)、それが「大間違い」であることが、これで容易にわかるだろう。

 こうした考えは、古くはラーナーという米国の経済学者が唱えた。「マクロ経済の視点で見れば、国債によって国民に負担が生じることはなく、現世代から将来世代に負担が転嫁されることもない」としている(「新正統派の見解」)。同じことを日本では、野口悠紀夫早大教授(「週刊東洋経済2005.11.5」)や本間正明阪大教授(「ゼミナール現代財政入門」)等が指摘している。

 ただ、経済学者のモディリアーニが「公債発行が民間投資を阻害すること(クラウディングアウト)を通じて将来の生産力が低下する=負担の将来への転嫁の可能性」を指摘しているが、これを認めるにしても、今は「デフレ」で民間需要が極端に不足(30兆円規模)している時だから、クラウディングアウト(注)など心配する必要はない。むしろ、民間に需要がない時は、資金を国が国債発行で市場から吸い上げて、復旧・復興のような有効な需要創出に使うべきなのだ。

 ただ、だからと言って、私も野放図に国債を出していいと言うつもりは全くない。国債を際限なく発行する弊害は、「将来世代へのつけ回し」とか「国債の信認」といった問題よりは、「財政の対応力を削ぐ」、すなわち、時々の行政ニーズや政策遂行のための予算支出、財政的対応の余地が少なくなる、という点にある。毎年毎年の「国債費」、つまり借金の返済で一般会計のかなりの部分を占めるということになると、それだけ一般経費、政策対応のための予算がとれなくなるわけだ。難しい言葉で言えば「財政の硬直性」が高まるということなので、それはなるべく避けなければいけないだろう。また、どんどん国債を出して良いことになると、官僚はまた無駄な支出にそのお金を使いだすということにもなりかねない。民間が本来使うはずだったお金を政府が国債で吸い上げて、それを無駄な支出に使うと、それだけ国全体の効用、成長力が落ちてしまうのだ。モディリアーニが心配した点と、ある意味、似たような弊害とも言えるだろう。

 以上、まとめると「国債(借金)」は内国民が引き受けている限り問題はない。たしかに、国には借金が増えるが、その分、国民には「資産」が増える。差し引きゼロでバランスシート的には、日本全体として借金を負っているわけではないということである。これで一番目の「マインドコントロール」が解けた。
 
 
(注)クラウディングアウト

国が資金需要をまかなうために大量の国債を発行すると、それによって市中の金利が上昇するため、民間の資金需要が抑制されること。
 
 
【シリーズ】
財務省の財政破綻/増税キャンペーンの嘘を暴く・・・①はじめに
財務省の財政破綻/増税キャンペーンの嘘を暴く・・・②デフレ時に増税は世界の非常識

財務省の財政破綻/増税キャンペーンの嘘を暴く・・・②デフレ時に増税は世界の非常識
財務省の財政破綻/増税キャンペーンの嘘を暴く・・・④国家の財政を家計に例えるのは間違い