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日本のTPP参加表明で中国が焦りはじめた・・・国際政治のダイナミズム

2011年11月21日  tag:

 私は、ホノルルAPEC開催前の朝日新聞のインタビュー(11/11)【※】で、TPP反対派には「国際政治のダイナミズムへの認識が足りない」と述べた。「TPP参加国は小さい国ばかりだとの指摘もあるが、日本が入れば韓国やタイなども参加するはずだ。中国を将来、自由主義経済のルールに組み込む大きなステップにもなる」と。

【※】朝日新聞【攻防TPP 賛否を問う】にインタビュー記事が掲載されました。

 
 TPPを近視眼的(静止画的)な、目先のメリット・デメリット論で片づけるのではなく、もっと大きなパースペクティブで(動画的に)捉えるべきと言いたかったのだ。TPPに日本が参加表明することで、このアジア太平洋地域で、国益や主導権をかけた「パワーゲーム」が始まる。

 案の定、ホノルルAPECで、日本に続いて、カナダとメキシコが参加を表明し、中国外務省は「我々も一貫して交渉の進展に関心を持っており、交渉参加国との意思疎通を保持したい」「招待状がくれば真剣に検討する」と言いだし、胡錦濤国家主席もTPPへの支持を表明せざるをえなかった。さらに、タイや韓国も重大な関心をもってTPPを捉えはじめた。

 また、これまで停滞していた日中韓FTAについて、中国は、三国による共同研究の報告とりまとめを一年前倒しし、この12月までとする提案をしてきた。そして、先週末行われた「東アジア首脳会議」の場でも、その交渉の加速が合意され、同じく、ASEAN+3、ASEAN+6の枠組みでの交渉促進も確認されたのである。これら一連の動きは、明らかに、日本がTPPに参加表明することにより、アジア太平洋地域の貿易・経済ルールが日米主導で決められることへの、中国政府の警戒感の表れだろう。

 ことほど左様に、国際政治は、あるきっかけでダイナミックに動く。そうした国際政治の現実、力学を知らない反対派は、やれ、TPPは米国以外は小国ばかりでメリットがないとか、米国は日本を標的に輸出促進や雇用の増大を狙っているだとか、的外れな批判を繰り返している。

 米自動車業界が日本のTPP参加に反対声明を出したように、その米国も一筋縄ではない。米農業団体も、日本がTPPに参加することで、その自由化度合いが阻害されるのではないかとの強い危惧を表明している。米国が一番に狙っているのは、今後、大きな成長が見込まれ、また、良質な消費市場が形成される可能性が高い東アジアの国々なのだ。

 いずれにせよ、WTOドーハラウンドが決裂して以来、世界各地で貿易・投資ルール作りを誰が主導するか、しのぎを削っているのが実情だ。その中であちこちに「貿易・投資仲良しクラブ」が形成されつつある。国を開いて生きていくしかない日本は、中国が主導するASEAN+3でも、日本が提唱したASEAN+6(前記+インド、豪州、ニュージーランド)でも、日中韓FTAでも、TPPでも良いだろう、どのクラブにも保険をかけて入り込み、この地域のルールメイキングを主導していくべきなのだ。

 にもかかわらず、野田総理の交渉に臨む腰が定まらない。ホノルルAPEC帰国後、なにやら米国と言った言わないの騒動が起こっているようだが、本来、交渉参加の条件として、「すべての品目、サービスをテーブルの上に出す」というのは当たり前の話だ。テーブルの上に全部出した上で、それをどう料理していくかというのが今後の交渉なのだ。

その当然のTPPの参加条件さえ、なぜ野田総理は否定をしなければならないのか。 こんな反対派に配慮して「言わなかった」と言っているような弱腰では、米国をはじめ、参加国と丁々発止、国益を守る交渉なんてできやしない。何もTPPだけの問題ではないが、その意味でも、一日でも早く民主党を政権の座から降ろすことが必要だ。

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