大増税ミッション野田内閣が本性剥きだし(下)・・・経済状況の好転が前提条件
2011年11月14日 tag:
この「消費増税法案」提出の前提には、「平成20年を含むこの三年間の経済状況の好転」という条件がある(2009年の所得税法附則104条)。しかし、この三年間、リーマンショック、大震災、原発事故等々と、日本の経済状況が好転したとは、国民一人として思っていないだろう。増税の前提が完全に崩れているのだ。
ちなみに、この3年間(平成20年度~22年度)の経済の状況をいくつかの指標で示すと、名目成長率は、▲4.6、▲3.7、0.4。22年度は若干プラスになったが、足元(23年4~6月期)は▲3.3だ。最大の問題はデフレの継続で、GDPデフレーターはずっとマイナスが続いている。消費者物価指数も同様だ。完全失業率も5%超と高止まりし、特に最近は若年層(15歳~24歳)の失業率が8%と高い。
この点、私が先の予算委(11/9)で問いただしたところ、さすがの野田首相も「現時点では、大震災の落ち込みがある。その上で、経済状況の好転は、名目・実質成長率など種々の経済指標の数値の改善状況を確認しつつ、東日本大震災の影響等からの景気回復過程の状況、国際経済の動向等を見極め、総合的に判断する」と答弁せざるを得なかった。
この景気配慮の問題とともに、国民に負担を求めるなら、まずは「隗より始めよ」、国会議員や公務員の定数や給与カット、国有資産の売却、特別会計の埋蔵金の捻出、天下りの根絶等のムダ遣いの解消等々「わが身を切る改革」を断行しなければならない。しかし、どれ一つとっても、民主党政権は約束を果たしていない。
思えば、村山政権で消費税の3%から5%アップを閣議決定(94年9月)し、橋本政権で実施に移した時(97年4月)は、景気に配慮し、増税前の三年間、毎年2兆円の特別減税を先行的に実施した。その結果、当時の統計では、95年1.6%、96年3.5%の経済成長率を達成していたのである。その上で、96年9月、中央省庁の再編や財政構造改革を含む「橋本5大改革」を打ち出し、その直後、衆院を解散し国民に信を問うた。
この96年秋の解散総選挙は、小選挙区が導入された初の選挙で、私は橋本首相の政務秘書官として、12日間・全国110か所の応援遊説に同行した。当時の橋本首相は各地でストレートに「消費増税への理解」を訴えたが、行く先々の人々の反応はとても良かった。89年の自民党惨敗の「消費税選挙」を幹事長として指揮した橋本首相も「江田君、89年の時とは全然ちがう。あの時は石まで投げられたが、今回は真剣なまなざしで聞いてくれる」と胸をなでおろしていた。
その手ごたえどおり、結果は、議席を20以上のばして239議席(選挙前218議席)としたのである。最近、「選挙で増税を訴えて勝ったためしはない」という人がいるが誤りだ。この時は確かに「勝った」のである。
しかし、今の野田政権は、この丁寧な「増税」プロセスをまったく踏んでいない。「我が身を切る改革」→「経済を成長路線にのせ税収をあげる」→「増税前に国民に信を問う」。私も、将来にわたって絶対増税まかりならん、と言っているのではない。この民主主義国家においては、国民が納得する形で、しっかり、その手続きを踏んでいくことが死活的に重要なのだ。こうしたことが、選挙で選ばれてもいない「学校秀才」たる財務官僚にわかるわけがない。
野田首相は、その財務官僚に何と言われているか知っているのだろうか。「財務省のパペットとは、我々の1操り人形のことではない。財務官僚のパーなペットのことだ」。ここまで言われてあなたは政治家としての矜持がないのか。言っても詮無いことだが、財務省の呪縛から抜け出さない限り、野田政権の明日はない。
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