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江田けんじ 衆議院議員 神奈川8区選出(横浜市青葉区・緑区・都筑区)

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シリーズ/野田「財務省政権」の何が問題か?・・・補論②小泉政権で財務省が復権!

2011年10月31日  tag:

 橋本政権が成し遂げた「大蔵省改革」。これで、財務省の「財政至上主義」を封じる、かなりの手立てを講じたつもりだったが、その後、この財務省の復権を許したのが、実は小泉政権だった。

 小泉政権は、一見、霞ヶ関と対峙してきた政権とのイメージがある。しかし、その内実をよくみると、きわめて巧妙に財務省と二人三脚の政権だったことがわかる。そして、それが、小泉政権長続きの一つの大きな要因でもあった、と私はとらえている。

 その証拠に、数々のスキャンダルの嵐で政府部内のポストを失った財務省が、小泉政権以降、次々と復権しているのだ。「財政と金融の分離」で誕生したはずの金融庁の長官や局長、日銀の副総裁、公正取引委員会の委員長などに、着々と財務官僚が就いている。

 橋本政権時、金融庁は、その「分離」の趣旨から、長官には検察出身者を据えた。局長や課長も、人材供給の面から大蔵省出向者が当面就くのはやむをえないにしても、いわゆる「ノーリターン・ルール」で、親元の財務省には二度と帰らないように措置した。

 しかし、それが今は見事に破られ、銀行局、証券局の二局廃止でできたはずの金融庁では、長官と三局長を大蔵省出向者が占め、いわば「焼け太り状態」となっている。公取委も検察出身者をトップにしたが、今や、元に戻り大蔵省出身者が座っている。何のことはない、財務省の「植民地化」が復活してしまったのである。

 今の日本の統治機構は、そうでなくても放っておくと、いつの間にか、財務省に支配されるようにできている。これでは、政治家が自ら、財務省支配に手を貸していると批判されてもしょうがないだろう。

 元々、小泉氏は「大蔵族」だった。経歴をみれば明らかなのだが、大蔵政務次官や大蔵委員会の理事等を歴任している。加えて、元大蔵省主計局長である福田赳夫元首相に師事し、「財政再建」のDNAは、その身体の中に染み着いていた。

 そもそも、小泉さんの持論である郵政民営化も、その大蔵省の夢だった。彼が「郵政民営化」にこだわったのも、大蔵族、銀行族としての経験が起源だとする説も強い。

 道路公団改革や特定財源の一般財源化もそうだ。当時、小泉首相が「暫定税率は維持しながら道路特定財源を一般財源化せよ」と指示したが、その方針は、財務省の振り付け通りだった。一般会計が苦しい中、特定財源の一般財源化でしのぎたい、しかし、暫定税率の廃止で収入が減るのは困る。これが財務省の真意だったからだ。

 大蔵人脈にも通じ、そのパワーの正体も知り尽くしている立場から、橋本政権が、その大蔵省と対峙することで苦しい政権運営を余儀なくされ、やがて崩壊していく姿を、当時閣内にいた小泉さんがどういう気持ちでながめていたか、想像に難くないだろう。

 思えば、かつて、国鉄や電電公社の民営化等で実績を残した「土光臨調」も、「増税なき財政再建」という旗印の下、「3K赤字」(コメ・国鉄・健保)の解消が悲願だった「大蔵省とともに歩んだ改革」だった。

 「この最大の官僚パワーを少なくとも敵には回さない」。

 医療費削減や三位一体改革でみせた地方交付税の大幅削減、道路公団改革、道路特定財源の一般財源化、スキャンダルで失職したはずの元大蔵幹部の復権等で財務省に適当に恩を売りながら、その代わり、どうしても自分がこだわるところ、例えば、旧大蔵官僚天下りの巣窟である政府系金融機関の統廃合等では、財務省にも泣いてもらう。そういった次元での、いわく言い難い、絶妙な二人三脚を成し遂げたのが小泉政権だったのだ。

 そして、08年春、いよいよ、財務省完全復活を象徴するような人事が画策された。

元財務事務次官、武藤敏郎氏の日銀総裁への昇格人事である。小泉内閣で、武藤氏が日銀副総裁に就任した時から、次期総裁含みの人事と言われていたが、まさにそれが表面化したというわけだ。98年の金融スキャンダルは当時の日本銀行をも直撃し、そのけじめをつけるため、また、「財政と金融の分離」の趣旨から、総裁をはじめ日銀幹部から旧大蔵省出身者を一掃したというのに、である。

 幸い、この人事は国会で紛糾し、日の目をみることはなかった。「財政と金融の分離」の原則も重要だが、それ以上に、金融はプロの世界だ。日銀総裁には、単に金融やその政策への造詣にとどまらず、実体験に裏付けられた市場との対話能力、マフィアと称される国際金融界での人脈、交渉力等が要求される。そういう意味では、簿記も知らない、バランスシートも読めない主計官僚では、とても務まるポストではないのだ。

 しかし、財務官僚の「超一級の天下り先」「夢の天下り先」は「日銀総裁」なのである。財務省は、これからも機会あるごとに、そのポスト獲りに全力をあげていくことだろう。08年の人事劇は、その財務省のすさまじい執念を感じさせるに十分すぎるものだった。

 「財務省」。「旧大蔵省」。この日本最強の官庁、いや、この国を支配しているスーパーエリート官庁との間合い、距離感こそが、今後、誰が総理となり、この国をリードしていくにせよ、政権運営にとってのカギ、避けてはとおれない課題になるのである。(終わり)

シリーズ/野田「財務省政権」の何が問題か?・・・補論①財務省への名称変更
シリーズ/野田「財務省政権」の何が問題か?・・・⑥財政至上主義の蔓延
シリーズ/野田「財務省政権」の何が問題か?・・・⑤財務省の殖民地支配
シリーズ/野田「財務省政権」の何が問題か?・・・④財務省は富士山、他省庁は並びの山
シリーズ/野田「財務省政権」の何が問題か?・・・③予算査定権、査察権が権力の源泉
シリーズ/野田「財務省政権」の何が問題か?・・・②財政と金融の分離
シリーズ/野田「財務省政権」の何が問題か?・・・①橋本行革の最大の課題

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シリーズ/野田「財務省政権」の何が問題か?・・・補論①財務省への名称変更
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