シリーズ/野田「財務省政権」の何が問題か?・・・④財務省は富士山、他省庁は並びの山
2011年10月 3日 tag:
他の省庁が、財務省に頭があがらないのは説明の要もない。予算を査定される側なので財務省に頭があがるはずもない。ただ、それが、単に予算査定業務にとどまらないところに大きな問題がある。
つまり、予算をみるということは、各省庁の全ての業務にチェックを入れられるということを意味する。現に、主計局の各省庁担当係や法規課は、ある政策に予算が直接必要か否かにかかわらず、各省庁の担当者を呼んで説明を聞き、実際上必要な指示ができるようになっている。
理屈は、「将来的に予算が必要になる可能性あり」とでも言えば十分で、各省庁は多少理不尽な要求と思っても、予算査定への影響が怖いので、早々に説明、了承を得るために出向いてしまうのだ。
こうした日常的なチェックによって、他省庁の細かなところにまで、財務省がコントロールできる仕組みができあがっているのである。
政権の中枢、首相官邸にも「財務省支配」が貫かれている。官邸官僚は、いろいろな省庁から出向して来ているが、誰もが、その省庁では将来を嘱望される超エリート官僚ばかりだ。その中でも、何といっても群を抜いて官邸に食い込んでいるのが財務省なのである。
まず、総理秘書官は、政治任用の政務担当秘書官1人と役所から出向してくる事務担当の総理秘書官で構成される。この事務秘書官は、慣例として、従来は財務省、経産省、外務省、警察庁の四省庁から、最近ではこれに厚生労働省と防衛省を加えて六省庁から派遣されている。このポストは、総理の考えや動向をいち早く知り、みずからの省庁の考えや政策を総理に振り付けるには絶好のポジションとなる。
この事務秘書官の筆頭格が財務省出身秘書官なのだ。他の省庁も、そこを慮って、年次が絶対的掟である霞ヶ関において、財務省に比し年次の下の者を秘書官に人選する。これも暗黙の了解とでもいうべきルールだ。実際、どの政権でも大体、この財務省出身秘書官が、総理への一番影響力ある側近となる。
同じように、総理の女房役、内閣のスポークスマンの官房長官にも、財務省を筆頭に事務秘書官がつく。また、内閣府や自民党政権時代の経済財政諮問会議の要のポスト(政策統括官等)、官房副長官補(内政担当)にも財務官僚が就いている。要は、財務省は、官邸の要所要所にポストを確保しているのだ。
同じようなことは、国会の現場でもある。ここは特に官邸以上に役人オミットの世界だが、与党の国会対策委員会や与野党協議の現場では、ちゃっかり衝立の後ろに、財務省政府委員室(国会担当)の役人が入って聞き耳をたてているのだ。
財務省の権力というのは、もちろん、予算査定権や徴税権、査察権を持っていることが背景にあるとはいえ、こうした権力の隅々にまで、大蔵省の先兵を潜りこませていることにもあると私は考えている。重要な政策決定の現場に常にアンテナをのばし情報をキャッチする。そして、財務官僚以外の官僚は、その場から排除しようとする。財務官僚のしたたかさである。
こうした機微に触れる会議や情報に接する機会が多いほど、その役所の権限強化につながる。彼らが永田町や霞ヶ関の覇権を握っているのには理由があるのだ。
(次週に続く)。
・ シリーズ/野田「財務省政権」の何が問題か?・・・③予算査定権、査察権が権力の源泉
・ シリーズ/野田「財務省政権」の何が問題か?・・・②財政と金融の分離
・ シリーズ/野田「財務省政権」の何が問題か?・・・①橋本行革の最大の課題
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