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江田けんじ 衆議院議員 神奈川8区選出(横浜市青葉区・緑区・都筑区)

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シリーズ/野田「財務省政権」の何が問題か?・・・③予算査定権、査察権が権力の源泉

2011年9月26日  tag:

 財務省がなぜ、霞が関や永田町、いや、この日本を支配できるのだろうか。それは「予算査定権」と「国税の査察権」を持っているからだ。ここが他の省庁と根本的に違う点で、それがこの省が別格扱いされている最大の理由なのである。

 政治家がどうして財務省に足を向けて寝られないのか。それは、高速道路や新幹線を引っ張ってくれ、橋をかけてくれといった、選挙区への利益誘導その他で、予算を握っている財務省のお世話に散々なっているからだ。

 だから、政治家は主計局長どころか、一主計官(課長級)、一主査(補佐級)のところにまで行って頭を下げてしまう。政治家というのは役人を呼びつけるのが常なのに、財務省だけは例外なのである。一回生や二回生議員はもちろんのこと、与党幹部ですら、予算や日頃の細かな陳情などで、財務省までわざわざ出向いて頭を下げるのだ。

 こうした力関係だから、「今、財務省の危機なんです。金融行政の分離だけは勘弁してください」「財務省の悲願、日銀総裁ポストを私どもに」といわれてしまったら、唯々諾々と請け負ってしまうのだ。

 ただ、この予算査定権より恐いのが国税の査察権だ。政治家は、そうでなくても脛(すね)に傷を持っている人が多い。表向きは絶対に認めないにしても、そこを突かれるとコロっと寝返ってしまう政治家が多いのだ。私も「大蔵改革」を進めている時に、そうした政治家の姿を実際に見せつけられてきた。

 したがって、この国税査察権を財務省から分離・独立させるようなことは、財務省にとっては絶対許せないことになる。橋本行革当時、突然、橋本首相が「国税庁の分離」を言いだしたことがある。当時は何でも「江田が通産省の省益でやっていること」「大蔵憎しでやっていること」と報じられたが、実は、これは、「財政と金融の分離」に逡巡していた橋本首相自身が、その代替案として提案したものだった。

 この時の、大蔵省出身の総理秘書官の形相、大蔵本省のあわてぶりは、財金分離の比ではなかった。結果、この総理自らの発案も、大蔵省による歴代自民党税制調査会長等への迅速かつ周到な「反対根回し」で、早々に葬り去られたのである。

 政権交代した民主党も当初、社会保険庁を国税庁と統合して「歳入庁」を設置するとマニフェストに明記していた。が、昨年の参院選マニフェストからは見事に消えてしまった。背後に、「国税庁が歳入庁になって、財務省から分離、独立されてはかなわない」とする財務省の働きかけがあったことは明らかだろう。

 税の査察権というのは、いわば「経済警察」の役割と言っても良い。その本家本元の警察庁がどういう組織になっているかというと、国家公安委員会という、内閣から独立した、政治的中立性が確保された「独立行政委員会」(3条委員会)の下に位置づけられている。警察権力というのは、時の権力や政治に左右されてはならない、公平中立でなければならないからだ。

 したがって、国税庁も、そのアナロジー(同義)で考えれば、財務省からの分離・独立は必然ともいえるのだ。税の査察権も「経済警察」ならば、たとえば、国家公安委員会と同じように、「徴税委員会」という独立行政委員会をつくって、その下に国税庁をぶらさげるという選択肢も十分あり得る。

 さらに、地方自治の観点から反対意見はあるものの、都道府県や市町村が行っている地方税の徴収事務を国税庁に統合すれば、何万人という公務員の削減にもつながる。これに社会保険料の徴収事務まで統合すれば、「税と社会保険料の一体徴収」による「未納、未徴収」問題の解決にも資するし、その人員削減効果、行革効果も計り知れない。行革と政治的中立性、そして公平性、一石三鳥の改革ともなるのだ。

(次週に続く)。

シリーズ/野田「財務省政権」の何が問題か?・・・②財政と金融の分離
・シリーズ/野田「財務省政権」の何が問題か?・・・①橋本行革の最大の課題

先週以前の「今週の直言」はこちら

シリーズ/野田「財務省政権」の何が問題か?・・・②財政と金融の分離
シリーズ/野田「財務省政権」の何が問題か?・・・④財務省は富士山、他省庁は並びの山