シリーズ/復興財源、100兆円の外貨準備を活用せよ・・・③いかさまファンドが35兆円の為替評価損!
2011年8月 8日 tag:
順序が相前後したが、そもそも外貨準備、外為特会とは何か?の話をしよう。
「外貨準備」とは、「前もって保有しておく対外支払いのための外貨」で「外国の通貨、外貨建て証券とローン、預金など」である。
日本がまだ戦後復興期の頃は、国際貿易の決済のための外貨不足で、その割り当てが政府により統制されていた時代があった。このことからもわかるように、外貨準備が必要な国というのは、まだ国力が弱い発展途上国であり、先進国、特にその通貨が国際貿易の決済通貨となっているような国(米欧日)では、そもそも多額の外貨準備など必要ないのだ。
それは、各国の外貨準備高をみればわかる。2010年末の米国CIAの推計によれば、トップは中国で約2.62兆ドル、2番目は日本(1.10兆ドル)、ロシア(0.48兆ドル)、サウジアラビア(0.46兆ドル)、台湾(0.39兆ドル)と続き、先進国は、米(0.14兆ドル)、英(0.11兆ドル)のように、日本の1/10程度しかない。日本の外貨準備が突出して大きいことは明らかであろう。
なぜ、そうなるのか。それは日本には特殊な要因があるからだ。日本の外国為替及び外国貿易法(外為法)では「財務大臣は、対外支払い手段の売買等所要の措置を講ずることにより、本邦通貨の外国為替相場の安定に努めるものとする」との規定がある。すなわち、「為替介入」のことである。
我が国は、時々の行きすぎた円高ドル安局面で市場への介入を行ってきた。直近では、先週木曜日(8/4)、米債務危機に端を発する、行きすぎた円高是正のための介入があったし、今年3月には、震災直後の円高に米欧日が協調介入した。昨年9月には、15年ぶりに82円にまでなった円高是正のために介入、その規模の大きさでは、03年の約33兆円にものぼる「テイラー・溝口介入」がある。
しかし、現在の変動相場制の下では、国際収支の不均衡による外国為替市場の外貨需給の過不足は、為替レートの変動によって自動的に調整される。すなわち、為替レートは原則、市場にゆだねるものとされているのだ。ただし、投機的な動き等によって、あまりに経済の実勢とかけ離れて為替レートが変動している場合は、その行きすぎた動きを是正するため、例外的に為替介入が許されるのだ。
この介入の結果が、日本の場合、今の100兆円規模(ただし、最近の円高で90兆円程度)の「外貨準備」になっている。ただ、「外貨準備」とは称してはいるが、それは伝統的な意味合いでの「外貨準備」ではない。したがって、日本が市場主義、自由経済の信奉者ならば、為替介入した結果、外貨建て資産が必要以上に積み上がった場合には、必ずその後で反対売買を行って、適正な外貨準備高の水準にまで縮小していく必要がある。
しかし、財務省は、その積み上がった資産をそのまま放置し、その適正規模に関する定見もなく、その保有する資産の内訳すら非公表にしたまま、昨今の急激な円高の結果、何と35兆円にものぼる為替評価損を出しているのである。
100兆円規模の外貨資産と言えば、国民一人当たり100万円の外貨投資をしているようなものだ。そして、その結果35万円の損を出している。これが民間企業なら、社長や役員の首が吹っ飛ぶ大問題に発展することだろう。「国民にリスクの開示をしない『いかさまファンド』」(中西けんじ・みんなの党参院議員)と誹られるのも当然だろう。
しかし、財務省は、その責任など微塵も認識していない。どころか、この評価損を盾に、20兆円超にものぼる積立金が取り崩せない名分にし、逆に、胸を張って開き直っている有様なのだ。
ところで、この莫大な外債を購入する、その原資はどうなっているのか。それは、政府短期証券(FB。通常は3カ月もの)を発行して調達した円を外貨に換えて、それをもとに、米国債、ユーロ債等を買うという手法が採用されている。
その残高は2010年3月末時点で106兆円超。国民からそれだけの大借金をして、その大宗が米国債に投資されているのだから、まさに、米国の財政を日本国民が支えている構図がここにある。この外為特会の外貨準備が「100兆円のおもいやり予算」(中西けんじ参院議員)と言われる所以だろう。
しかも、この政府短期証券は、借り換えの繰り返しによって、根雪のように積りに積り、莫大な国債発行残高の大きな要因ともなっているのだ。したがって、今後は、この借金残高を減らすためにも、また、二度と莫大な為替評価損を出さないためにも、この外貨投資(外貨準備)の規模を順次縮小していくべきなのだ。
しかし、当の財務省には全くその気がなく、そもそも問題の所在や事の本質が理解できない菅首相や野田財務相は、みんなの党の国会での追及に対し、官僚答弁を棒読みするばかりという無残な姿をさらしている。
(来週に続く)。
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