発送電分離は日本再生のカギ ・・・②夢の技術・スマートグリッド
2011年6月13日 tag:
先々週の「直言」で、「発送電分離」は、①発電部門への新規参入による電気料金下げ、②代替電源や埋蔵電力の活用による電力の安定供給、③新・再生エネルギーの供給拡大と、「一石三鳥の特効薬」であることを論じた。
しかし、「発送電分離」には、当然のことながら九電力、それに支援されてきた自民党(電力族議員)、民主党(電力総連)等からの抵抗が強い。
私が、通産省で電気事業に関わったのは入省二ポスト目(資源エネルギー庁公益事業部計画課)だったが、当時は、「電気事業法にさわると首が飛ぶ」「電気事業法を改正するだけで九電力体制の再編・自由化に繋がるからだめだ」と言われていた。やれば資源エネルギー庁長官をはじめ幹部の首が飛ぶ、アンタッチャブルなタブーとされていたのだ。
その後、さすがに、時代の要請に促されて、先に触れた、卸電力事業者の参入解禁、大口需要家に対する小売りの自由化が図られた。しかし、「発送電分離」については、10年ほど前、政府部内でも議論が盛り上がった時期もあったが、最終的には政治的な圧力を受けて潰えた。その時、推進していた経産省幹部が最後に改革派官僚に吐いた言葉が「命あっての改革だ。お前らも自分の命は自分で守れ」だったという。それほど、難しい課題なのである。
しかし、この発送電分離をした上で、その送電網にスマートグリッド(IT制御の双方向送電網)とスマートメーター(家庭等の電力消費管理機器)を導入することで、飛躍的に省電力、省設備投資が図られ、かつ生活様式も一変する。また、莫大な経済波及効果もある。いわば、「夢の送電網」が実現できるのだ。
まず、省電力省エネについて言えば、スマートグリッドは、スマートメーターとともに、最適な家庭、オフィス等での家電製品の消費電力管理(「電力の見える化」)が可能となり、20%の節電効果が期待されるとの試算もある。この夏15%程度の節電が要請されているが、それを上回る効果があるのだ。発送電のロスも極小化できる。
また、電力の設備投資は現在、ピーク時(日本のピーク時需要は夏の6000万kw/昨年の場合)に対応して莫大な投資が必要とされ極めて非効率であるが、「電力の見える化による制御」で電力需要の平準化が図られ、その結果、必要な設備投資額が削減できる。米国のある会社の試算によると12%削減の効果があるという、
さらに、電気の品質(電圧や周波数)の確保が、スマートグリッドによる「監視と制御」で可能となり、供給にムラがある、太陽光や風力のような不安定な新・再生エネルギー、分散型の電源もそのコントロール下に置くことが可能となる。その結果、新・再生エネルギーの利用拡大が可能となり、6千万kwとも言われる自家発電も、いざという時の供給余力にすることができるようになるのだ。
今回の事故で「原発安全神話」は崩れた。電力の地域独占と発送電一体が電力の安定供給を担保しているという「安定供給神話」も崩れた。だからこそ、今回はビッグチャンスだ。「ピンチをチャンスに変える」「禍を転じて福となす」。日本再生の切り札、地域独占の廃止や発送電分離を含む電力の再編自由化に、みんなの党は邁進していく決意である。
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