増税なしでも20兆円は明日にでも出せる! ・・・国債整理基金への繰入れ停止で10兆円
2011年4月18日 tag:
今、与野党は、第一次補正予算について精力的な検討に入っている。その対策のメニュー、歳出の内容については、各党が知恵を出し合って、今のフェーズに照らして過不足なく中味を盛り込めば良いだけの話だ。ただ、その財源となってくると話が違う。
政府・民主党の案は、補正の規模が4兆円程度で、その財源は「年金国庫負担率の引下げ(2.5兆円)」等で捻出する。しかし、こんな社会保障への安心・安全を損ねてまでする必要はサラサラない。なぜなら、政治の決断で、明日からでも15兆円~20兆円程度の財源はポンと出てくるからだ。
結論から先に言おう。15兆円~20兆円とは、国債整理基金特別会計への一般会計からの「定率繰入れ停止」で10兆円、労働保険特別会計の雇用勘定の資産負債差額(6.5兆円)のうちの5兆円、4Kと言われる民主党政権のバラマキ予算のカットで2.5兆円、予備費で1兆円等だ。これに国会議員や公務員の人件費削減が上乗せされる。これが内訳だ。
ただ、この一般会計から国債整理基金特別会計への「定率繰入れ停止」が、なかなか、他の政治家にもメディアにも理解してもらえない。というか、「それは将来の借金返済の原資だから使えない」という財務省の説明に、「そうだな」と思考停止する政治家やメディアがあまりにも多すぎるのだ。
だからここで、できるだけわかりやすく説明したいと思う。そのためには正確性はあえて捨象する。
「国債整理基金特別会計」は確かに借金返済のための特会だ。そして、国の借金、すなわち、国債には「60年償還ルール」というのがあり、公共事業のように長期に便益が及ぶものを念頭に、60年ですべて返済するのが原則である。
したがって、毎年、1年当たりの償還率は、100%÷60年≒1.6%となる。現在の国の国債残高は約600兆円だから、600兆円×1.6%で約10兆円のお金が借金(元本)返済原資として毎年、「国債整理基金特別会計」に一般会計から繰り入れられるのだ(これに加え、利子分としてさらに10兆円程度が一般会計から繰入れられる。あわせて20兆円程度を予算の国債費として計上)。
しかし、この特会では、毎年10兆円の剰余金(タンス預金)が残っているのである。毎年、借金の元本返済と利子分返済をきっちり行った上で、なお10兆円、毎年余っているのである。
だから、我々みんなの党は、この非常時、借金(元本)返済には、この剰余金10兆円を使えば足りるのだから、わざわざ、10兆円を一般会計から繰り入れる必要はない、それを震災対策に使おうと提案しているのだ。しかも、この手法は過去、1982~89年度、93~95年度において、計11回にわたり採用された。
この繰入れ分10兆円は、既に2011年度予算でも当然予算化されているし、今年度予算の44兆円の借金(国債)で賄われているから、この10兆円を使ったからといって、この44兆円という借金を1円も増やすものではない。当たり前の話だ。
こうした議論をすると、財務省は必ず「この特会の剰余金10兆円は、将来の借金返済の原資だから使えない」と言うだろう。しかし、上述したように今年度「繰入れ」を停止しても、今年度の借金返済が滞るわけではない。いや、剰余金10兆円(元本返済)と10兆円の繰入れ(利子返済)とあわせて、20兆円の返済は例年どおりできるのである。ただ、特会の剰余金がゼロになるだけだ。
だから、我々も、この手法を来年も続けろというつもりは毛頭ない。今回、1回こっきり10兆円使ったら、来年度は元に戻し「定率繰入れ」を再開すればいい。これで借金の継続的返済に何の問題もないのだ。
なお、この借金返済原資10兆円を先食いすることについては「将来へつけ回しをすることで問題だ」という反論もありえるだろう。しかし、そういう人に言いたい。「じゃあ、毎年この10兆円を繰り入れるために、10兆円の赤字国債を新規で出していることこそ将来へのつけ回しではないですか?」と。
そう、この仕組みを、専門用語で「減債制度」というが、こんな制度を採用している国などないのだ。財務省がわざわざ毎年の借金と累計の借金残高を大きく見せるために、こんな複雑な仕組みを採用しているともいえるのだ。
こうした「経理操作」は、他のどこの国もしていないから、こうした「操作」をしたからといって、日本国債の国際的信認が落ちるわけもない。
議論が混乱するので、ここから先は読み飛ばしてもらって結構だが、こんな制度は廃止しても、借金(国債)の元本は「借換債」で対応し、利子分だけは毎年の予算で返済していけば、借金総額は増えない。我々もさすがに、利子分まで返す必要はないというつもりはない。そうしないと借金が雪だるま式に増えるからだ。
その借換債は、実は、毎年110兆円以上発行している。こうした事実すら、政治家やメディアはあまり知らない。「減債制度」を廃止しても、その借換債が最大10兆円増えるだけだ。それが国債市場で順調に消化されているうちはそれで、消化しにくくなれば、その範囲内で、その年の予算で元本返済分のお金を措置すれば良いだけの話だ。
まとめよう。繰入れ10兆円を震災対策財源に回しても、借金返済は例年通り行えるし、今年度の借金を増やすわけでもない。そして、何よりも、これだけ打撃を受け疲弊している日本経済にトドメをさす増税も一切しなくていい。「良いことづくめ」な話だが、正真正銘、今の日本の救世主ともなるべき財源なのである(来週に続く)。
Copyright(C) Kenji Eda All Rights Reserved.