ロシアのメドベージェフ大統領が、先般、国後島を訪問した。現職の大統領が、実効支配しているとはいえ、日本との間で紛争のある北方領土を訪れたのは初めてのことだ。
なぜ、こうした事態に立ち至ったのか。それは、民主党政権の「外交無策」、「ロシアほったらかし外交」の「成果」に他ならない。
ただ、かといって民主党だけの責めに帰すのは若干不公平だ。ことは、小泉政権時代の「ほったらかし」にもあるからだ。この北方領土問題は、橋本政権の「クラスノヤルスク合意」(後述)で頂点に達し、森政権時の「イルクーツク合意」までは、曲りなりにも、その解決へのモーメンタムがあった。それを断絶させたのは、小泉政権だったからだ。
それが政権交代で鳩山政権となり、ロシア側の期待は一気に高まった。なぜなら、鳩山首相(当時)は、日ソ共同宣言(56年)を発した鳩山一郎元首相(祖父)との関係もあり、ロシアとの関係、北方領土問題の解決について並々ならぬ意欲示したからだ。あわよくば、半年以内にこの問題について前進させるという考えを打ち出してもいた。
しかし、それは、鳩山氏の見事なくらいの、いつもの「口先政治」に他ならなかった。昨年11月には、メドベージェフ大統領も、日本の首相の意欲に呼応して「領土問題を前進させたい」との積極的な発言をしていたものの、半年たっても一年たっても何らアクションを起こさない政権に失望し、そして、鳩山氏が首相退任した後、二度も訪ロしたにもかかわらず、単なる世間話、社交をして帰るに及んで、ロシア側の堪忍袋の緒が切れたのだ。「こんな、何ら戦略も提案もない民主党政権をこれ以上相手にしてもしょうがない」。
こういった背景が、択捉島近海での露軍の軍事演習、対日戦勝記念日(9月2日)の策定につながり、それに対し、何ら反発のメッセージを示さない民主党政権をさらにみくびり、今回の国後訪問に至った、といのが真相だろう。
今回のAPECでの日ロ首脳会談では、「北方領土は我が国の固有の領土。この問題を前進させよう」と言った菅首相に対し、露大統領は「クリル諸島(北方領土のロシア名)はロシアの領土であり、将来もそうあり続ける」と答えたという。ロシア側の関心事項である「経済協力」には言及したものの、領土問題は取り合わなかった。これでは、四島の帰属問題ありと初めて認めた東京宣言(93年)よりも後退した、と批判されてもしょうがないだろう。これらは、すべて、民主党政権の外交無策、対ロ無策に起因するものなのだ(次週に続く)。
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