シリーズ「有言不実行内閣」・・・(1)予算の総組み替え
2010年10月18日 tag:
「有言実行」。政治家はすべてかくありたいと思うが、考えてみれば当たり前の話だ。しかし、この当たり前のことができず、国民の信を失い退陣したのが鳩山政権ではなかったのか。「言っていることとやっていることが違う」「言うこともコロコロと変わる」。
菅内閣も、その反省のもとに、あえて「有言実行内閣」を標榜しているのであろうが、本当に期待できるのか、はたまた、「口先内閣」で終わってしまうのか、個別具体の事例に即し、一つ一つ検証していきたい。
まず、小沢一郎氏への党内処分の問題だ。
この点で、先週開かれた予算委では、菅直人氏の著書「大臣」が度々取り上げられた。この本には私にも思い出がある。橋本政権が終わると同時に官僚の世界におさらばし、海外への放浪の旅に出る前、厚生大臣と総理秘書官という関係で一緒に仕事をさせていただいたので、民主党代表室に挨拶に行ったのだ。その時、直接いただいたのが、この本だった。
その後読んでみて、そこに書かれていることの大半は首肯できるものだったし、問題意識も共有できた。菅直人という政治家に少しは期待してもいいかなと思わせたのも、この本があったからだ。
その本が昨年秋に増補、改訂され、再出版された。そこにこう書いてあるのだ。
「自分の党の議員が、(金銭的な)疑惑をもたれているのであれば、党首として何らかの措置をとるべきだろう」「国会のことは国会に聞いてくれ」ではだめだ。
まさにその通りだろう。この本が再出版された時は、菅氏は現役の副総理だったし、小沢問題も既に起きていた。当然、ここに書いている通り「有言実行」するべきで、与党の党首として、小沢氏に対する党内での措置は自らが行うべきだろう。しかし、菅総理からは歯切れの良い答弁は返ってこなかった。
この本には、もうひとつ、素晴らしいことが書いてある。「予算をどうつくるか」という章があり、「私にはそもそも削るという発想がない」、予算は「すべてをゼロベースで始める。前年がこうだったから、そこから何%削るとか、上乗せするという発想はない」「シーリングは廃止」だと。
そして、鳩山政権下の「すべての予算を組み替え、新たな財源を生み出す」(昨年9月末に閣議決定)とした方針を「民主党革命だ」とまで言い、胸を張っている。まさに私も、この予算の総組み替えこそが、政権交代の醍醐味だと考えているが、菅政権になって7月に決定された概算要求基準では、「社会保障費、地方交付税を除いて政策経費は今年度より一律で1割削減」とされた。
まさにシーリングそのものではないか。そして、そこから出てきた財源を使って1兆円超の「特別枠」を設ける。どこかで見た光景ではないか、そう自民党政権時代、財務官僚主導で毎年行われた旧態然たる予算編成手法を見事に踏襲したのである。
この豹変ぶりには、驚きを通り過ぎて開いた口がふさがらないといった感じだ。何のことはない、政策経費(23兆円程度)の一律1割カットというのは、逆に言うと、9割の既得権益を認めるということだ。ゼロベースで予算の総組み替えをする意思なしと受け取るしかない。
思えば、今年度予算も、「予算の総組み替え」を方針にしながら、結果は、自民党予算(約88兆)に民主党のバラマキを継ぎ足して、92兆円にも膨れ上がったのだ。そして、マニフェストで約束した、初年度から7.1兆円、12.6兆円、13.2兆円、16.8兆円という財源捻出は、その目標達成に遠く及ばないのが現実だ。
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