現役出向+人事交流+窓際ポスト+裏下り=天下り天国の復活
2010年8月 2日 tag: 菅内閣、天下り、退職管理基本方針
6月22日、参院選突入のドサクサに紛れて、菅内閣は国家公務員の「退職管理基本方針」を閣議決定した。これを許せば、表向き「天下りの根絶」を装いながら、実は「天下りの全面解禁」を許すことになり、到底認めるわけにはいかない。
この点、私は、8月3日の予算委員会で追及したが、時間が足りないのと、わけのわからない政府答弁で不完全燃焼に終わったしまった。そこで、ここであらためて問題の所在について説明しよう(より詳細は私の定例記者会見8/3参照)
この「方針」の最大の問題は、独立行政法人の役員ポストなどへの現役出向の拡大にある。要は、「退職して再就職」なら、あっせんがあれば天下りとなるが、「退職せずに現役で出向」という形をとれば、天下り規制はすり抜けられる。いわば「現役の天下り」の容認ということだ。そして、定年間際で役所に一旦戻し、そして退職させる。民主党のいう「定年まで勤務できる環境条件の整備」がこれで実現できるということだろう。
この「現役出向」は、実は天下りへの風当たりが強まった2004~5年頃以降、役所が目立たないように自主的に進めていたやり方で、今回の方針は、それを白昼堂々、政権がお墨付きを出して進めていこうというものなのだ。
おまけに、鳩山政権時、独法役員は公募するという方針を決めたが、この「現役出向」の場合は、その例外扱いにするという。しかも、出向の対象は、公益法人や特殊会社(JR、NTT、道路会社、日本郵政等)にも拡大された。何をかいわんや、である。
この「現役出向」は、今夏の役所の定例人事異動等で、今後、どんどん「玉込め」されていく。一日も早く「撤回」「凍結」しなければ、「既得権益」として固定化し、数年間は変えられないものだ。早急な対応が求められるのである。
さらに、この方針では「高給窓際ポスト」の創設まで認めた。すなわち「新たな専門スタッフ職の創設」だ。これは、本来退職すべき局長・部長級の職員が、辞める代わりに定年まで座れる「上位の職制上の段階を創設」するものであり、年収千数百万円が想定されている。
また、これとは別に、8月中旬をめどに、人事院を中心に検討されている新たな「官民人事交流」の案では、これまで弊害があるとされて禁止されていた審議官・部長クラスの民間への現役出向(人事交流)が解禁されることになっている。
そもそも天下りをなぜ禁止しなければならないのか。それは、天下り先と役所との癒着で行政がゆがめられる危険性や、そのポストを確保するために無駄な補助金や許認可、団体が維持される弊害を除去することにあった。その意味では、高位のポストにある権限の強い官僚の現役出向は、公的法人であれ、民間であれ、天下りと同等かそれ以上の弊害が懸念されるし、「高給窓際ポスト」を増やしていけば、民主党が約束した「国家公務員総人件費の2割減」など「夢のまた夢」に終わるだろう。
そして、定年後は「裏下り」を認めることによって、従前どおり、70歳、80歳まで「渡り鳥人生」が謳歌できる。なぜなら、民主党政権になってから、役所のあっせんではなく、天下り官僚OBのネットワークが、それぞれの後釜(後輩OB)を推薦し当該団体が了承すれば「天下り」ではない、という解釈が確立されたからだ。
その典型例が、私が予算委でも追及した日本損保協会副会長人事だ。10代以上に渡って大蔵OBが指定席のように座っているこのポストでさえ、「調査した結果、役所のあっせんはなかったから天下りではない」と抜け抜けと答弁するのだ。その「調査」といえば、金融庁の担当課を通じて損保協会に聞いたら「あっせんはない」との回答を得たから、程度のものなのだ。泥棒に「あなた盗んだのか」と聞いて「盗んでいない」で終われば、それは調査とは到底言えないだろう。
この一連の方針については、新規採用の4割減とあいまって、辞めないお年寄りの官僚が滞留する「頭でっかちのいびつな組織構造」になると、同じ霞が関、若手官僚からも怨嗟の声があがっている。当然であろう。
すべては、民主党政権が、公務員への労働基本権付与による民間並みの人員整理と、給与法の抜本改正による「能力実績主義」による給与体系を導入しようとしないことに問題があるのだ。みんなの党は、引き続き、真の公務員制度改革の実現に向けて、法案提出を含め、全力を注いでまいりたい。
(参考)天下りの全面解禁(幹部職員)
【定年まで】
・公的法人の役員ポスト等への現役出向→拡大
・民間との人事交流による現役出向→解禁
・高給窓際ポスト→創設
【定年後】
・「裏下り」で渡り鳥
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