国民は、こんな政治を期待して民主党に政権をとらせたわけではない。年末の陳情一元化の流れからある程度予想されていたこととはいえ、ここまで露骨に、党中心に土建利権政治を貫くとは。本当に「小沢一郎」という政治家はわかりやすい政治家だ。
細川政権が短命で倒れたとき、「あと1、2年続いていたら、自民党は完膚なきまでに破壊されていただろう」と言われた。今回のように、予算編成を通じて自民党支持基盤を突き崩せば、自民党はガタガタになるという意味だ。
昨年末、業界、地方からの予算要望を、党幹事長室に一元化し、表舞台の華やかな事業仕分けとは裏腹に、密室で不明朗な基準で「重点項目」を選定し、居並ぶ閣僚にそれを「全国民の要望」と称して突き付けた。そして、その結果は、今回明らかになったように、党幹事長室を通じて各民主党県連に内示し、そこから各知事、市町村長等に通知するという形で結実したのだ。
見事なほどの「民主党の選挙が第一」の利益誘導政治だ。自民党政権時代もほめられたものではなかったが、これほどまでに露骨なことはしなかった。政権交代してやっと新しい政治が始まると思っていた国民の思いは、鳩山・小沢両氏の「政治とカネ」スキャンダルと相俟って、「失望」、いや政治への「絶望」へと転化していくおそれが高い。
民主党のDNAは、小沢一郎という政治家を得て(03年の民由合併)、確実に変質した。96年、あの鳩山・菅両氏が立ち上げた民主党、クリーンでオープン、およそ政官業の癒着とは縁遠い政党だったはずだ。それが、自民党といっても、そのまた旧い自民党、二十年以上前の自民党旧経世会のDNAに組み換えられた。今、小沢氏に物言えぬ空気が民主党に充満しているのも、旧経世会の「一致結束箱弁当」の伝統だ。
これでは、民主党がマニフェストで約束した、政策決定の「内閣一元化」ではなく「党への一元化」だろう。本来、予算編成権は内閣にあり、予算は国会の審議をへてはじめて成立する。今回の個所付け内示は、こうした民主的プロセスを無視したものだ。職務権限もなく、国会で説明責任も果たさない党の一握りの幹部が国政を壟断する。これでは「議院内閣制」、ひいては「議会制民主主義」の「死」だろう。
先の直言で、民主党は「小沢抜き政権を」と書いた。近時、その感を益々強くしている。にもかかわらず、昨日の某全国紙では、民主党地方組織の「小沢続投支持」が8割にのぼるという。安倍政権ではないが「KY(空気が読めない)」の極致というか、危機意識の欠如というか、この政党がどうしようもないところまで来ていることを象徴している。
鳩山さん、菅さん、もう遅いかもしれないが、是非、結党の原点に立ち返って、もう一度、民主党の本来のDNAを取り戻してほしい。そうじゃないと、夏の参院選で、国民の鉄槌が下されることになろう。
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