今、私が一番懸念していることは、今回の郵政国営化への転換が、郵貯、簡保300兆円のお金を、民間から政官に取り戻し、再び、「経世会」ばりに「利権化」していこうという意図が隠されているのではないか、ということだ。
これが杞憂に終わることを望む。しかし、政権、官邸にいた人間としての本能的な危険信号が、今、かなりの強度、頻度で鳴っていることだけは確かだ。
こういうことだ。日本郵政会社は、財投改革(預託の廃止等)をした橋本政権以前に戻って、再び、「新財政投融資スキーム」のための「原資」の供給会社になるのではないか。すなわち、鳩山政権下で発行されるであろう莫大な国債発行(借金)の「大口引き受け手」に成り、そして、そのお金(新財投)が、「地域振興」「中小企業対策」の美名の下にばらまかれる。新しい利権構造の誕生である。まさに、日本郵政の社長や副社長に官僚出身者、しかも財務省出身が座った意味がここにあるのではないか。
財務省vs郵政省は、この郵貯、簡保の資金をめぐって「百年戦争」だった。その本丸に堂々と財務官僚のドンが乗り込む。民主党は野党時代、このような母屋の省庁と利害関係のある人事を、いわゆる「裏ルート」と称して天下りにあたるとし、その根絶を主張していたはずだ。そうした公約違反はあえて承知でこうしたスキームを創り出す。
そうであれば、なかなか「したたかな政権」である。いや、「表の顔」の鳩山首相や菅副首相はそういう問題意識すらないのかもしれない。しかし、郵政国有化や元大蔵人事を画策した「裏の顔」は、そうした強い意図を持っているように感じられる。過疎地の簡易局の廃止や「かんぽの宿問題」等で国民に「郵政見直し」の必要性を植え付け、しっかり政官一体で「闇の利権」を作り出す。だとすれば、この政権には空恐ろしい知恵者がいるに違いない。
いずれにせよ、仮にそうであれば、時間がたてば自ずからその全容は明らかになってくる。また、先週指摘したとおり、この「ビジネスモデル」はいずれ破たんする。「郵政見直し」で国民が一番期待している「郵便ネットワーク」の全国的な維持には、更なる税金投入が必要だとわかった時点で、その正体がばれ国民の支持もなくなるだろう。
鳩山首相に再度言いたい。「借金して国民に配る」なら誰でもできるのだ。そんなことを国民は民主党政権に求めたわけではない。あくまでも「207兆円の予算組み換え」「税金の無駄遣いの解消」「埋蔵金の発掘」等で新規予算は賄うと言うから国民は支持したのだ。
それが、先祖帰りして、借金の原資を郵貯、簡保の資金に求めて政官一体でばらまく。民主党への政権交代で「巨額な借金」と「300兆円の利権」だけが残った。そして、財務官僚が目論む「消費税の大増税」に道を拓いた。そう言われないためにも、今からでも遅くない。「郵政事業の抜本的見直し」も「抜本見直し」した方が良いだろう。
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