来年度予算要求が95兆円にのぼり、「事項要求」と称する隠れ要求額を足すと97兆円にものぼるという。今年度当初予算が88兆円だから、これが如何に大きな額かがわかる。
もちろん、これはあくまで要求段階の数字だから、年末までの査定作業で無駄を徹底的に削れば良いといえば良い。是非、そうしてもらいたいが、しかし、その作業が不十分に終わり、税収が今年度比6兆円程度減り、それらを赤字国債を含む借金で賄うとすれば、この国の財政はひたすら破たんへの道を進むことだろう。
そもそも、今年度補正予算14兆円の無駄づかい解消の目的も定かではない。世間は「やれ2兆だ」「3兆だ」と騒いでいるが、この数字にどんな意味があるのか。確かに、無駄削減額は多ければ多いほど良い。しかし、財政の全体のフレームワークがはっきりしないのに、その数字の評価はできない。
また、民主党は麻生政権下のこの補正予算を「究極のばらまき予算」と批判していたはずだ。現に、その財源は10兆円の国債(借金)で賄われている。そして、そのうち3兆円は赤字国債なのだ。この結果、今年度予算は史上最大の102兆円に膨れあがり、単年度の借金は33兆円から44兆円まで増えた。小泉政権時に「新規国債発行枠30兆円」を超えるか否かを議論していた時代と隔世の感がある。
だから、政権交代したら当然、このような大盤振る舞いの補正予算は前提としないと私は思っていた。一から見直し、無駄なお金を出したなら、そのお金を借金(赤字国債等)の減額に使うのが筋で、仮に景気が二番底を打つ可能性が高く、どうしても追加対策を打つ必要があるのなら、今年度の第二次補正に使い、麻生政権とは違う、真に景気に効く予算に組み替えるべきなのだ。それを、この「ずぶずぶの予算」を当たり前のように前提として、来年度予算の必要新規財源にも流用しようと言うから話がおかしくなる。
本来、民主党のマニフェストにあるように、今後、子供手当や高速道路の無料化、農家の戸別所得補償等のために、来年度以降、毎年7.1兆円、12.6兆円、13.2兆円、16.8兆円と必要になっていく新規財源は、「207兆円の当初予算(一般+特会)の組み替え」「無駄遣いの解消」「埋蔵金の発掘」で捻出されるはずだったのだ。
それが、いつのまにか、補正後の102兆円、国債(借金)44兆円の予算を前提として議論している。仙谷行政刷新相をはじめ民主党政権幹部の言うことを聞いていても、来年度予算編成にあたって、当然のごとく、この、44兆円より国債発行額を来年度は抑えるのか増やすのかを議論している。驚くべきことである。
申し訳ないが、来年度の当初予算(補正後ではない!)で44兆円もの国債を出して良いなら、予算は誰が組んでも容易に組める。何しろ、あの麻生政権ですら33兆円で当初予算は組んだのだから。
政府全体の財政の枠組み、基本方針が定まらないまま、各大臣、省庁がバラバラにやっているからこういうことが起こる。これから予算査定作業を進めるにしても、全体の財政規律をどこに置くのかさえもはっきりしない。私も、経済が悪い時に、景気より財政再建を優先しろなどと言うつもりはない。ある程度の国債発行はやむを得ないにしても、中長期的な財政規律ぐらいは決めておくべきだろう。そうしないと、諸外国からこの国がどこを向いて財政運営をしているのかさえわからなくなる。結果、日本への信認が下がる。
こうした事態を、政権交代時の一時的な混乱、あるいは試行錯誤という理由で許してしまうわけにはいかない。経済も国民生活も予算編成も、だからといって待ってはくれないからだ。
「政権交代ボケ」をしている余裕など、今の日本にはない。
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