「労働基本権の付与による民間並みのリストラ」は民主党政権下では叶いそうにない。労使の「使」である民主党政権が、支持母体である「労」(官公労や自治労)の大リストラに踏み込む可能性が極めて低いからだ。この点は、民主党のマニフェストにも「公務員の削減数」が一切ふれられていないことからもわかる。
ちなみに、原口総務相は就任早々、地方出先機関の原則廃止を打ち出した。是非、実現してほしいが、そこで働く21万人の国家公務員を一体どうするのか。今の段階では明らかではないが、地方自治体(又はその広域連合)に移管したり、中央省庁に吸い上げたりするだけなら、総人件費はまったく変わらない。しかし、独立行政法人の原則廃止と並んで、民主党政権下ではそうなる可能性が非常に高い。
ことほど左様に、公務員労組の抵抗でノンキャリア官僚のリストラや給料カットにも踏み込めないとなれば、民主党のマニフェストにある「公務員の総人件費2割削減」の実現など望むべくもない。どころか、天下りの禁止で不要な人材を抱え込んだ行政府の人件費は逆に大幅に増えてしまう。私が「天下りの禁止には二つの条件がある」と指摘した所以である。
問題はさらにある。鳩山政権は、独立行政法人の理事長などの役員人事について、9月末に任期切れを迎えた役員人事、33法人144人のうち、「公務員OB」が関連する人事、26法人42人分を凍結し、後任を「公募」で選ぶと発表した。
ただ、この公募には公務員OBの応募も認めるという。また、公募を審査するのは、その法人を監督する省庁というのだ。これでは、「公募」を隠れ蓑にしたお手盛りの人事になる危険性が高い。少なくとも、官邸に第三者による審査機関を設け、しっかりと情報公開をしながら決定する等、選定プロセスを透明にしていくべきだろう。
また、この際、公務員OBは認めないという方針を打ち出さないと、霞が関の威光に配慮して、有能な民間人材が公募してくることなどないだろう。「公務員OBも民間人と平等に扱われるべきだ」「公務員OBを含めて適材適所なら良い」と言っているようでは自民党政権と同じだ。再考を促したい。
また、関連団体への天下りは、 独立行政法人や特殊法人に限らない。社団や財団、民間企業も含め、役所の直接的なあっせんを禁止しても、「裏ルート」で実際上天下らせる例が後を絶たない。役所ではなく「天下りOBネットワーク」を通じて、「自主的に後任を選んだ」と称して後輩官僚を引いてくる。民主党は国会で舌鋒鋭く、天下りの「裏」渡りルートの解明や禁止を訴えていたはずだ。その点を今後どうするのか。こうした重大な懸念に対し、どういった方策を打ち出していくか、大きな関心をもって注視していきたい。
先週も述べたが、「国家経営の大リストラ」、この人員の整理、降格や給与の引き下げ等を含めた国家公務員制度の抜本改革なくして、「脱官僚「税金の無駄遣いの解消」を標榜する民主党政権の存在意義はない。我々みんなの党は、公務員制度改革の「あらまほしき姿」を議員立法等で示しながら、今後、民主党の、この問題での本気度をあぶり出していきたい。
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