しかし、税金投入という点で、早速、麻生政権で、その方針は変更されてしまった。おまけに、この時の改革の大前提だった「無駄な道路はつくりません」という方針も、先週の直言でもふれたように完全に骨抜きになったため、「45年後には通行料をタダ」という目標自体もないも同然となった。
現に、当時は、9342キロの有料道路の建設計画全部は造りませんという約束だったのに、それが、いつのまにか今では14000キロまで伸びている。それがさらに今回の「週末1000円乗り放題」で、さらにあやしくなったというのが正直なところだ。
ところで、景気対策として打った今回の措置だが、その対象はファミリーカーだけで、景気に一番効くトラックには適用されない。これは、トラックまで「1000円乗り放題」にすると、渋滞がひどくなる、さらに多額な税金投入が必要ということであきらめたわけだが、これでは、本来の景気対策としては、「定額給付金」と同じように、あまり効果がないということになってしまう。こういう政策は、やるならやる、やらないならやらない、中途半端が一番良くないわけで、同じやるならトラックまで含めるべきだったろう。
ちなみに、対象といえば、今回はETC搭載車だけに限っている。この際、ETCを一気に普及させよう、その結果、料金所の人員整理やシステムの合理化に役立てようという意図があることは理解するが、その裏に、天下り財団が存在することも指摘しておかなければならない。
具体的には「道路システム高度化推進機構」(ORSE)という組織だ。役員名簿を見ると、専務理事と常務理事には元国土交通省官僚、監事には元警察庁官僚が天下っている。その稼ぎは半端ではない。ETCのセットアップ料金と称して、3000円がとられるのだが、そのうちの500円?1000円がこのORSEに入る。その収入が、約20億円。その他にも、「鍵使用料」と称して、計13億円のシステムの使用料収入が入る。これはETCと道路側アンテナとで無線交信をする際に必要な暗号(鍵情報)を、オルセが開発したため、ETCメーカーとカード会社は、一ユーザー契約毎に百円をオルセに支払うのだ。要は、ETCを普及させればさせるほど、この天下り団体は儲かる仕組みになっているのである。
いずれにせよ、今後、快適なカーライフをエンジョイしていくために高速道路を整備するにしても、しっかりとした需要予測に基づいて、費用対便益分析をして、限られた予算の中で優先順位をつけて、やっていかなければならない。今後、相変わらず、政治家が地元誘導で「熊しか通らない」無駄な道路をつくり続けるようだと、「全国料金プール性」といって、不採算道路の建設コスト等が、いつまでたっても首都高や阪高、東名等のユーザーに押し付けられる構図は変わらないだろう。
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