補正予算と言えば、このゴールデンウィークの話題は「週末1000円で乗り放題」だった。実際、高速道路各社の調査によると、期間中(4月25日-5月6日)、高速道路の渋滞の発生回数は58回で、28回だった昨年に比べて倍増したという。一方でJRの新幹線や特急、急行の利用客は7%減と大きく落ち込み、あおりを食った格好だ。
高速道路の「無料化」や「1000円乗り放題」。それはクルマユーザーにとっては、うれしいに決まっている。しかし、物事はそんなに単純ではない。当然ながら、どこからかお金が降ってくるわけではないので、タダや割引になった分だけ、誰かがそれを負担するはめになるわけだ。
結論から先にいえば、タダや割引になった分は、国民みんなの税金や借金でまかなうことになる。要は、高速道路のコストを、そのユーザーの通行料で全部まかなうのか、それとも、その全部(タダの場合)または一部(割引の場合)を、高速道路を使おうが使うまいが、国民みんなの税金でまかなうか、の違いなのだ。高速道路のコストには、新たに建設する道路の経費もあれば、既存の道路の維持・補修・管理費などもある。
これに加えて、道路公団時代の40兆円の借金をどうするのか、という大問題もある。ご承知のように、道路公団時代、「熊しか通らない」ような無駄な道路を全国あちこちにつくり、どんどん赤字しか生まない道路を、国の財政投融資(郵貯・簡保資金等が財源)という制度を使い、借金に借金を重ねてつくってきた。そのツケ、累積債務が、道路公団を民営化する時、なんと40兆円にものぼっていたのだ。
これをどうやって返済していくのかが、小泉政権下での道路改革の最大の目的だった。私は、こうした高速道路の経費や莫大な借金返済の負担を、高速道路をまったく使っていない人にまでに押し付けるのは筋違いだと思っているから、やはり基本は、高速道路ユーザーの負担で、すなわち、通行料でまかなうのが正しいと考えている。
もう少し、詳しく説明しよう。高速道路の無料化は、従来から、民主党がそのマニフェストで打ち出している政策だ。その民主党が3月末、通行料をタダにする代わりに、この経費や借金返済をまかなう方法を明らかにした。
それによると、現在、日本高速道路保有・債務返済機構(道路公団の後身)が抱える35兆円の借金は、無料化開始時点で国が承継し、利子支払い分も含め、毎年1.26兆円、60年にわたって償還することになっている。そう、先に言ったように、たしかに通行料はタダにはなるが、その代わり、毎年、1.26兆円の税金が60年間にわたって必要になるのである。すなわち、国民みんなで負担するかたちだ。
一方、政府・自民党の「週末1000円乗り放題」(今後2年間の時限措置)も、タダほどではないが、割引分だけ税金が投入されているのだ。その額は5000億円。そもそも小泉政権で取り組んだ道路改革時には、「受益する者が負担する」、すなわち、通行料で高速道路の経費や借金返済をまかなうという考え方の下に、もう無駄な道路はつくりません、道路経費も節減しますから、新たに税金を投入することなく45年後には通行料をタダにできるんです、ということだったのである。(以下次週に続く。)
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