アメリカの大統領選挙で、当初、泡沫候補だったビル・クリントン氏が勝ったのも、オバマ大統領が誕生したのも、この公開討論会を何度も行い、それを識者が採点し、内容を全米にテレビやラジオ、新聞等で報道するうちに、彼らのリーダーシップや政策が評価されたからである。
一方、日本では、選挙期間中に一回だけ、候補者の理念や政策が書かれた「選挙公報」というものが、公費で新聞に織り込まれてくる。何の変哲もない地味な一色刷りで、およそ有権者が読もうとは思わない代物だ。
また、テレビの「政見放送」は、衆議院に小選挙区制度が導入されてからは、「政党本位」という美名の下に、候補者個人ではなく、政党単位に時間の枠が与えられるようになった。
自民党の場合は30分間。メインは最初と最後で、その部分には自民党総裁が出演し、党の理念や政策を訴える。そして、真ん中の部分、10分間程度を、神奈川県の場合では18選挙区(03年11月の第43回衆議院選挙時)の候補者が分ける。候補者一人あたり20秒程度のスピーチで、政策や人柄の何がわかると言うのだろう。以前は、少なくとも数分間、候補者個人が政見放送で政策を訴えていたものだったが、それも廃止された。また、政党候補はまだしも、無所属候補からは、政見放送という、その機会さえも奪われてしまったのである。
さらに、インターネットによる選挙活動も認めるべきだ。eメールまで認めるかどうかは議論があるだろうが、選挙用ホームページは少なくとも解禁し、投票もインターネットによる投票を認めるべきだ。インターネット投票にすれば、容易に替え玉投票が可能になるとも言われる。しかし、その危険性は、いまのハガキによる「投票券制度」でも同じことだ。誰かが私のハガキ持って投票に行っても、同性ならば、まずはチェックされない。
結局メリットとデメリットを比較考量して、どちらがいいかということだ。インターネット投票では、選挙管理委員会が、ハガキでパスワードを本人宛に出し、そのパスワードを入力して投票する。自宅や会社のパソコンから入力できるようにすることが肝心だ。
もちろん弊害もあろう。しかし、要は、50~60%で終わっている現行制度での投票率を、80%~90%にすることが必要だ。そのためには、特に低投票率の若者世代の政治参加を促す必要がある。よりよい民意反映のためには、インターネットを利用するに越したことはない。
二週にわたって説明したように、今の選挙制度は、有権者に、「政治家の理念や政策をまじめにわからせようとは思うな」と言わんばかりのやり方なのである。これでは、いつまでたっても、政策本位の選挙は行われず、「ドブ板」にたけた政治家の粗製濫造という政治が、この国の将来を危うくしていくであろう。
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