橋本政権時の経企庁長官としての麻生氏の実績は、ないどころか、「良きに計らえ」の官僚言いなりで、「経済失政」の最大の責任者だった。それでは、あれだけ重責を歴任した小泉政権時はどうか。国民の皆さんに問いたいのは、麻生氏が残した実績で何か心に残るものを一つでも上げられますか、ということだ。私には、少なくとも一つもない。
小池氏が総裁選のテレビ出演で、勇気をもって横にいる麻生氏に言ったことがあった。小泉政権時、郵政民営化に反対した総務省局長二人の首を切ったことがあったが、これは官邸主導で、総務大臣の麻生氏は反対したと。官僚擁護派の麻生氏らしい逸話である。
三位一体改革でも、3兆円の税源移譲は自分の功績だと麻生氏は自画自賛していたが、これも竹中経済財政担当大臣をはじめとした官邸主導だろう。総務大臣としての実績をいうなら5兆円規模の地方交付税のぶった切りで地方を疲弊させたぐらいではないか。地方の格差をいうなら、その責任も麻生氏にある。
公務員制度改革では、渡辺喜美前行革担当大臣が公言していたように「そんなことやるのかよ」と極めて消極的だった。天下りの禁止なぞとてもできやしないだろう。そう、麻生氏は、霞が関にとっては「万々歳政権」。私の元同僚は今、各省庁で局長クラスの中枢にいるが、なぜ麻生氏が評判が良いのかときいてみると、「何でも我々の言うことを聞いてくれるから」だそうだ。いま、政治に求められているのが、官僚の利権や既得権益に切り込むことだというのに、これでは、まったく逆行だ。
今回の組閣で、中川財務大臣を金融担当大臣と兼務させことも暴挙だ。財政と金融の分離は、麻生氏も閣僚を務めた「橋本行革」で実現したものだが、それまで、財政主導の大蔵省において、財政出動を逡巡することで、金融政策をゆがめてきた歴史をまったく無視するものだ。
G7へどの大臣が出席するかなどは些末なことで、心配なら金融担当大臣を財務大臣の代わりに出席させればいい。現に、米国の財務省はその実は金融省で、予算はホワイトハウスの行政管理予算局と議会が担っている。G7には日銀総裁も出席するのだから、何ら問題はない。今の日本が金融危機とは思わないが、仮にそのような事態になれば、官邸にそのための「金融危機対応会議」も置いている。そうした危機管理の事態には総理自らが陣頭指揮をとるという考えからだ。そんなことも、麻生氏はご存じないらしい。
事ほど左様に、自らが閣僚として身をおいた橋本政権が決めた財金分離も反古にする。重責を歴任した小泉政権の構造改革も今は否定する。これまでの政治家としての経歴はいったい何だったのか。単にポストが欲しいだけの、定見のない、権力志向だけの男と評されてもしょうがないだろう。
そして今、総理として、財政出動、ばらまきをやろうとしている。経済や経営も知らず、単なる過信家が行う政治は恐い。11年度プライマリーバランスを黒字化というタガをはすしてばらまけば、日本の財政規律は失われ、国際的な信認も失う。カンフル剤は、打てば確かに元気になるが、切れた途端、また元に戻る。そして借金だけが残るという悪循環をまたぞろ繰り返すのか。私が、麻生政権が続けば日本が終わるという意味がここにある。
いずれにせよ、これから私は、麻生政権を一日も早く終わらせるためには何がベストなのか、それだけを考えて政治行動を決していきたいと思う。
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