静かなる政権交代を監視せよ!
2008年9月22日 tag: 国家公務員制度改革推進本部 , 政権交代 , 政治主導 , 有識者会議
自民党総裁選は、案の定「出来レース」で、互いの違いもよくわからない、低調な政策論議ばかりで、まったくの消化試合になってしまった。
リーマンの破たんや事故米の問題等で世の中が震撼しているというのに、全国17カ所での遊説と称して、ひたすら自民党の宣伝合戦ばかりを繰り広げている総裁候補者の姿をみると、滑稽にすら思えてくる。何度もいうが、中味が変わらないのに、その表紙やパッケージを変えても、同じ事が繰り返されるだけだ。
しかし、今、我々が注視しなければならないのは、このくだらない総裁選ではなく、「静かなる政権交代」ではないか。すなわち、永田町から霞が関への政権交代だ。この政治の空白、混乱に乗じて、今、中央省庁の再編や官邸機能の強化等によりつくられてきた「政治主導」の流れが、確実に逆行しつつあるのだ。
そう、霞が関は、この政治の体たらくをせせら笑い、「政治はダメだ。やはり、我々官僚がしっかりしなければ」と、着々と失地回復のための布石を打っているのである。
具体例を挙げよう。首相官邸主導として設置された政策推進会議に、それが顕著だ。「脱藩官僚の会」も先週、緊急アピール第三弾として、記者会見で警告を発した。
「行政減量・効率化有識者会議」は、独立行政法人改革について、雇用能力開発機構の解体もどき(「私のしごと館」の見せ掛け廃止)などで打ち止めとなる可能性が高い。
「国家公務員制度改革推進本部」では、財界人など外部有識者を集めた「顧問会議」の開催が、隔月開催になりそうだ。これでは実質的な審議は期待できず、これを放置すれば、事務局官僚主導になることは火を見るより明らかだ。内閣人事局や国家戦略スタッフなど重要な制度設計が官僚の独善になる可能性がある。
発足したばかりの「行政支出総点検会議」の、いわゆる「無駄ゼロ」については、特別会計のムダ遣いの洗い出し、福田総理が指示した「公益法人向けの支出3割削減」等の目標が空洞化する可能性が大きい。
「社会保障国民会議」は、この10月に、年金、医療制度等について答申する予定だが、政治指導力抜きでは抜本改革案は到底無理だろう。
「地方分権改革推進会議」では、この秋に、地方ブロック機関の統廃合が予定されている。既に官僚の抵抗にはすさまじいものがあり、政治のバックアップと国民の監視がなければ頓挫し、道州制への流れも止まるだろう。
以上いずれも、官邸官僚と各会議事務局官僚の連携による官僚主導が定着しつつあるということだ。
国政には一刻の猶予も許されない。各種会議は、事務局=官僚主導ではなく、会議の委員主導で進行すべきで、官僚が答申や報告の原案を書くなどもってのほかだ。また、その際、各種委員の言動にもマスコミや国民の監視を促したい。最近では、いわゆる御用学者だけでなく、財界人をも官僚は取り込み、間違った情報やデータを刷り込み始めている。「有識者」を霞が関がハイジャックしつつあるのだ。
解散総選挙も近いといわれる。「官僚主導の政治が続く限り、この国の将来はない」との認識の下、どの政権であれ、どんな政治家であれ、官僚をしっかりと御し、かつ官僚の既得権益に切り込める政権、政治家を、国民は今こそ、しっかりと見極めていくべきなのである。
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