国民一人一人の夢を実現できる社会を実現したい

江田けんじ 衆議院議員 神奈川8区選出(横浜市青葉区・緑区・都筑区)

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国民はご祝儀相場戦術にだまされるな!・・・ もう政界再編しかない

2008年9月 7日  tag: , ,

 こういうことがあった。
 時は98年7月、参院選惨敗・退陣直前の遊説中のこと、財政構造改革路線を転換する「恒久減税」を自民党の幹部間の協議で決められ、飲まされた橋本首相が、たばこをくゆらせながら、長い間、車窓から外を眺めていた。

 遊説中の車の中といえば、いつもは好きな本を読むか、居眠りをするか、どちらかだった橋本首相にとって、その姿は、首相としての脱力感、無力感を痛切に感じている姿に、私には受け取られた。その沈痛な何ともいえない車中の雰囲気は、横にいた私に「政権の終焉」を予感させるに十分だった。

 今回、辞意表明した福田首相の姿は、その橋本首相の姿と重なる。辞任の引き金を引いたのは、やはり、直接的には「定額減税」だろう。政局より政策の、少なくともそれを自認している総理が、本来受入れ難いものを飲まされた時の脱力感、無力感は、他人から計りしれるものではない。

 しかし、より根本的な要因、背景には、福田首相が、自分では選挙をしない前提の下に、慎重にベストの辞め時を考えていたことにある。半年前のこの「直言」でも披露したが、誇り高い福田首相としては、総選挙惨敗による不様な退陣だけは避けたい。一方、サミット後臨時国会前のこの時期は、比較的政治空白も生まず、無投票の民主党代表選にぶつけて開かれた総裁選をやり新内閣を発足させれば、ご祝儀相場で即解散、選挙も戦えるだろう。

 辞意表明の記者会見で、記者の質問にむっとして「私は自分のことを客観的に見れるんですよ」と言った意味は、内閣の支持率も低く、党内からも世論からも批判が強い自分が選挙をやれば惨敗は目にみえている、そのぐらいのことは認識していますよ、とことだ。また、元々、自分の選挙ですら奥様やご長男に任せていた方が、首相として全国津々浦々遊説して歩く姿など想像もできなかったはずだ。

 そして、「総裁選は華々しくやって」とか「何人も出て徹底的にやって」という、福田首相らしからぬ発言をあえてしているのは、自分は、自民党にとって、ベストのタイミングを考えて辞任を決断したんだよ、と言いたいがためだ。

 そして、今のところ、そのとおりの政局の展開になっている。私は、辞意表明直後から、テレビや新聞等の取材に対し、この「ご祝儀相場戦術」にだまされてはいけませんよ、と言い続けてきた。政権放り出しで「もうこれで自民党は終わりだ」「政権担当能力がない」と散々だった時から、これは自民党生き残りのための唯一のシナリオであり、新総理の下でのご祝儀相場解散で一気に自公過半数維持の計算づくの戦術だと、警告を発し続けてきた。

 しかし、案の定、先日の共同通信等の調査では、福田退陣後の新総裁への期待感で、既にご祝儀が出た。自民中心の政権、あるいは自民への支持率が急上昇し、民主党のそれを半年ぶりに逆転したのだ。確かに、もうだまされない、正体は見抜いているぞ、という国民もいるが、この数字は既にだまされ始めた国民が出てきたということを意味する。

 一方、対抗馬の民主党の危機意識は、驚くほど薄い。若手が代表選を目指したのにつぶされ、何だやはり口先だけだ、党内独裁なのではないか等の国民の声がある中、自民党では、現時点ではベストに近い顔ぶれが総裁選に並び、侃々諤々の議論をし、我々は民主党と違う、このように開かれた総裁選ができる、民主党は小沢独裁だ、北朝鮮と同じだといったプロパガンダをここぞとばかりにやってくる。にもかかわらず、民主党では代表選は無投票、「メディア戦略委員会」といった馬鹿げた、効果もない対応でお茶を濁そうとしている。

 一体、この党は本当に政権奪取をする気があるのか! 疑ってしまうような体たらくだ。この辺が、自民党と民主党の格の違い、したたかさの違いで、このまま行けば、政権交代など夢のまた夢だろう。

 ただ私は、今回の福田退陣をもっと広く、日本の「政治全体の劣化」ととらえている。福田首相が無責任だ、自民党がどうだといった次元ではなく、問題は日本政治全体の構造的なものととらえるべきと考えている。今の政党を前提とする限り、自民であれ、民主であれ、トップは中味がバラバラの党に足を引っ張られ、ろくな改革はできないのだ。私が「もう政界再編しかない」と叫ぶ理由である。

 自民党は言わずもがな、だ。今の「政官業癒着」の、官僚の上に乗っかった、考え方がバラバラの自民党政治を前提とする限り、いくら表紙(トップ)を変えても同じことが繰り返されるだけだ。それはひとり、福田さん、安倍さんだけの責任ではない。あの小泉さんですら、これだけはと思い総理になった、その郵政民営化法案ですら、党内から反対され、解散を打たなければ実現できなかったではないか。今の政党政治の破たんを象徴的に表している。こういうことが、党内で、国民の目に見えないところで、日々、頻繁に起こっている。

 思えば、自民党は、本当は森内閣で終わっていた。それが、「自民党をぶっ壊す」というキャッチコピーをひっさげて登場した小泉純一郎という生命維持装置をつけて5.6年延命してきたのだ。その生命維持装置がはずれた時、こうなることは、もう必然の成り行きだった。誰がなっても同じ。とうに消費期限切れの自民党にだまされてはならない。

 そもそも、政党というのは、当たり前の話だが、実現したい理念や基本政策があって、この指とまれで同志が集まり、実現していく政治集団だ。その基本的な要素が今の自民党、そして、民主党には自民党以上に、欠けているのだ。自民であれ民主であれ基本政策さえ異なる議員が同居する限り、こんな「エセ政党政治、二大政党制」を続けている限り、どの政治家が首相になっても、福田首相あるいは小泉、安倍元首相と同じ悩み、苦労を抱え、国民本位の改革は一向に前に進まないだろう。そして、その間隙を縫って、官僚が良いように差配する政治が続いている。

 私がよく、今の政党は「頭と胴体と手足が別々の方向に動く動物と同じだ。一歩も前に進めない」という所以だ。小泉首相は、それでも、その強烈な個性、突破力で、手足が反対方向にいくのに、頭だけで強引にグイグイ引っ張り、やっと、それでも2、3歩進んだ改革だったのだ。そして、小泉級の奇人、変人は、政界にはもういない。

 したがって、実現すべきは、党のトップ(総裁選)や政党を取り換えること(政権交代)ではなく、政党の中身にメスを入れ、基本政策を一致させる外科手術、すなわち政界再編しかないのだ。

 もう一度言う。自民党の「ご祝儀相場戦術」に乗るなどもってのほかだ。このまま自民党政権が続けば、今度こそ日本の終わりが見えてくる。また、だからといって、民主党に政権交代しても、自民党以上のバラバラ感で、より一層改革は進まなくなるだろう。政権をとっていない民主党は、今なら何でも言えるが、政権をとるということは、日々、具体的な政策で、一つ一つ決断を下していくということを意味する。そうなれば、必ず、民主党政権は頓挫する。

 こうした日本の政治の正体、政党政治の機能不全を、賢明な有権者の方々には、是非見抜いていただきたいと思う。まさに次期総選挙では、日本の民度、民主主義の成熟度が問われるのである。

都市再生機構(UR)を廃止または民営化せよ
静かなる政権交代を監視せよ!