私と一緒に「脱藩官僚の会」を立ち上げた高橋洋一さんが、財務省が「ない!ない!」と言い張っていた特別会計の「埋蔵金」を発掘したのは有名だが、これをきっかけに、国会でも、与野党入り乱れて「埋蔵金」あるなし論争が始まった。
自民党の中川秀直さんが、まだ40~50兆円あるといい、民主党の細野豪志さんも、百兆円近くあるとしている。しかしその一方、自民党の財政改革研究会(会長・与謝野馨政調会長)は「埋蔵金はない」と真っ向から反対している。
ちなみに、これまで、13.8兆円(H18年度)、1.8兆円(H19年度)、9.8兆円(H20年度)、あわせて25兆円超の埋蔵金を掘り出している。出所は、財政融資特会と外為資金特会である。 さて、H18年度の特別会計の剰余金・積立金は196兆円である。ただ、この中で、年金等保険金(141兆円)、国債整理(13兆円)には手がつけられないから、ざっくりと言うと、それを除いた額、すなわち40兆円前後のお金の精査が必要ということになる。その大部分、御三家は上記二特会(計30兆円)と労働保険特会(11兆円)である。
労働保険特会のいい加減さは先週号で書いた。この11兆円のうち、かなりの部分を取り崩して何ら問題はない。
財融特会については、H18年度に12兆円、H19年度に8兆円、あわせて20兆円の準備金を取り崩したが、現在の金利水準を前提にすると、6兆円(ストック)+毎年2~3兆円(フロー)の埋蔵金が出てくる。要するに、現在の財投債の調達金利より、過去の高金利時代に貸し付けた事業からの返済金利の方が上回るため、その差額が当期利益として上がってくるのだ。
外為資金特会については言をまたない。この特会は、政府短期証券で資金を調達し、ドル建て債等で運用しているのだが、前者の金利は0.5%、後者は5%程度だから、毎年4%分相応の収益が上がることになる。財務省もこの点がうしろめたいのか、その積立金のうち1.8兆円を毎年一般会計に繰り入れてきた。しかし、積立率は法定もされておらず、まだ10%~20%の積立金(19.3兆円〔19年度末〕)があるのが現状である。
そもそも民間の保険会社等の積立率(2~3%)からしてもこれは過剰で、また、100兆円を超える外貨準備を持っていること自体が先進国では異常とされる。なぜなら先進国は、変動相場制を守るために為替介入しないのが原則で、外貨準備も日本の1/10以下なのである。したがって、この特会からは埋蔵金だけでなく、本体事業からも「ザクザクと」お金が出てくる。
これに加えて、独立行政法人の剰余金(15兆円)、郵政民営化会社やJTの政府株の売却益(10兆円超)、国有財産売却(1兆円超)、地デジによる周波数売却(4兆円)等を合算すると「埋蔵金候補」の額が途方もない額になっていく。
いずれにせよ、政権与党の責任は、外部の人間でさえ、少し考えれば思いつく、この莫大な「埋蔵金」を、この厳しい財政事情の中、一円残らず発掘することだろう。自民党内で「ムダボ」と称して、数千億円程度の無駄遣いを撲滅といっている場合ではないのである。
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