橋下大阪改革・・・他の首長も見習うべきだ!
2008年6月 9日 tag: 橋下徹
大阪の橋下徹知事が、総額1100億円の財政再建案を発表した。四ヶ月という短期間で、しかも行政的に素人と言うしかない知事がここまでできる。「天晴れ」と評価したい。
橋下氏と私は、彼がテレビに出始めた頃から、同じ番組で週一回は必ず会う間柄だった。控え室で番組の事前打ち合わせをしている時の彼は、本番中の「すべった発言」や「タカ派的発言」「失言」等のイメージとは違い、おとなしく謙虚な人柄だった。表向きの彼は、多分にテレビを意識した「キャラ」だったのだろう。
だから、と言うわけでもないが、失礼ながら彼が大阪府知事に当選した時も、当選後「大風呂敷?」を広げた時も、「どうせできやしない」と白けた気分で見ていた。今、その不明を恥じている。
彼の最大の決断は、当選時(1月28月)には、ほぼ出来上がっていた08年度予算案を「ちゃら」にして暫定予算を作成し、その間を利用して自分なりの予算を6月には出す、としたことだろう。既定の予算を前提として、「道路!道路!」と叫び、「暫定税率がなくなると予算に穴があく」と泣きを入れていたどこかの知事とは基本的に違う。橋下氏は、知事がその気になれば、役人が作った予算は変えられるということを身をもって示した。
橋下氏と他の知事と違う点は他にもある。彼は「大阪が範をたれないと分権もまともに進まない」「国に分権を迫れない」と言った。そして「このままだと自治体経営ができない。国からの税源移譲が不可欠」とも言った。ガソリン税の特定財源維持を声高に訴え、相変わらず国土交通省へ陳情にいく「おねだり民主主義」の知事達と、ここでも根本的に違う。分権改革を求めている知事ならば、「特定財源は一般財源化して税源は地方に移譲し、我々が道路以外にも自由に使えるようにしてくれ」と言うのが筋なのだ。橋下氏はこのことを良く理解している。
改革の中味に入ろう。大阪府の財政赤字は尋常ではない。9年連続の赤字決算で、このままいくと16年度には「実質公債比率」が25%を超え、国のいう「財政健全化団体」となる。つまり、大阪府は国家管理化され、箸の上げ下ろしまで国の監視下に置かれる。「自治」体でなくなるわけだ。
これを前提に、橋下知事は、今年度1100億円、来年度以降も計画的に再建額を決めて実行するとしている。だから、本年度は9年間6500億円減の財政再建の一里塚にすぎず、まだまだ道のりは遠いのだ。そのことについても「何か夢のような生活が待っているわけではない」と、甘いことを言わず府民に率直に語りかけた。好感が持てる。
再建案の中味で一番評価できるのは、役人の人件費の削減(345億円)だ。平均12%の減額と退職手当の5%減も盛り込んだ。これで職員の基本給は都道府県で最下位になる。これまでの歴代知事は、選挙での応援もあって職員組合と二人三脚の府政を進めてきた。この点でも組合とは決別し、毅然として自ら交渉に当たり決断した。
公共事業を含む一般政策経費で320億円減を確保したが、その内容については確かに色々な意見はあるだろう。しかし、当初想定していた警察(治安)や救急救命医療、障害者施策にはあえて踏み込まなかった。そうしたメリハリも結果的に効かせた。退職手当債185億円の発行を「借金はしない」との公約違反と批判する向きもあるが、1100億円の185億円なら15%程度だ。85%の歩留まりなら十分合格点をあげられるだろう。
私はあるテレビ番組でこの財政再建案に「80点」という高得点をつけた。いつも総理への評価で「20点」「30点」をつけてきた私にしては稀な高評価だった。「甘い!」と言われるかもしれないが、そこは役人や既得権益を代表する政治家と本当に戦った人にしかわからない苦しさを、私は理解しているつもりだ。批判する人には「じゃあ他に誰がここまでできたか」と問いたい。
ただ、橋下知事にとってはこれからが正念場だ。夏には再建案を審議する府議会もある。厳しい歳出削減による府民サービスの低下に、どこまで府民がついて来られるかという問題もある。景気減速のあおりで府の税収が予想より落ち込むという懸念材料もある。しかし、これら幾多の苦難を乗り越えて、是非、初志貫徹していただきたい。ご健闘を祈る!
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