私は先般、「高速道路、必ずしもバラ色にあらず」という問題提起のため、あえて首相あての質問主意書で「ストロー現象」について問いただした。
「ストロー現象」とは、広辞苑によると「交通網の発達により、小都市の人や物資が大都市に吸い寄せられてしまう現象」とされている。私が具体的にあげたのは以下の二事例である。
一つ目は、東京湾アクアラインの木更津だ。アクアライン開通により、その千葉県側の起点・木更津は、消費者の横浜や川崎、東京への流出等による商業の衰退(駅前からのデパート、スーパー等の撤退、商店街の「シャッター通り」化)、郊外の工業団地用地や宅地造成、土地区画整理事業の売れ残り、地価の大幅下落等で著しく衰退したと言われている。
二つ目は、私の故郷・岡山の、瀬戸大橋の児島だ。瀬戸大橋(自動車道を含む。)の岡山県側の起点・倉敷市児島地区も、同様の理由で、当初の期待に大きく反し、著しく衰退したと言われている。人口減や通行量の激減による駅前商店街の「シャッター通り」化、土地区画整理事業の売れ残り、地場産業の繊維業の衰退等である。一方の起点・香川県坂出市も同様の状況という。
主意書では取り上げなかったが、東国原知事のいる九州も例外ではない。高速道路の整備によって、最近は週末の「ハレの日」には、福岡に買い物に行く人が増えているそうだ。鹿児島ですら同様の事情という。宮崎県といえば、かつての宿場町に高千穂町という所があるが、昔は天岩戸神社に多くの観光客が訪問し、地元で一泊していたが、高速道路の整備により、観光客が日帰りし、宿場町としては完全に衰退してしまったという。
ことほど左様に「高速道路を引けば地域振興になる」ばかりではないことを銘記すべきだ。東国原知事には、「高速道路を引けば、福岡や鹿児島に人や車が素通りして、お金を地元に落としてくれなくなりますよ、その点の精査は行ったのですか」と聞きたい。
ちなみに、国土交通省に、道路の中期計画策定に当たり、この「ストロー効果」も、B/C分析(費用対便益分析)で考慮に入れているかと問うたところ、当然のように「入れていない」との答えだった。これでは第二のアクアライン、第二の瀬戸大橋が、将来、多数出現することは間違いないだろう。
今週から、この道路の問題が、3月末の暫定税率の期限切れを控え、国会でクライマックスを迎える。杜撰としか言いようのない「どんぶり勘定」の道路計画、相変わらず続く特別会計のムダ遣いの数々、土建・利権政治の構造等々・・・。この際、すべてをリセットした上で、顔を洗い直して出直した方が良い。
暫定税率廃止で地方自治体が大混乱に陥るって? それは「提出した予算は、議会では一切修正させない」という財務官僚ばりの「官僚政治」に乗っかった政治家の理屈でしかない。元々、このような政治状況の下で、暫定税率継続を当たり前のように予算を編成した地方首長こそ責められるべきで、大阪府が知事の交代で暫定予算でしのいでいるように、その時には議会で予算を修正、あるいは出し直せば済む話だろう。
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