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地球環境問題を考える・・・(3) 京都議定書の真実(下)

2008年3月 3日  tag: ,

 もちろん、京都議定書にもいくつかの欠陥がある。その一番が「米国の脱退」である。ブッシュ政権となった 01年3月、米国は「途上国に削減義務なし」「米経済に悪影響を及ぼす」こと等を理由に議定書から離脱した。

 その結果、京都議定書で温暖化ガスの削減義務を負う国は、全世界の排出量ベースでたったの30%というカバー率となったのである。今や米国と並ぶ最大排出国となった中国やインドといった新興国も「途上国扱い」で、当初から削減義務は負っていない。ゆえに「ポスト京都」では主要な排出国が全員参加する枠組みが求められているのである。

 「京都メカニズム」の問題点としては、「森林吸収源」という、科学的に言えば大いに疑問のある「抜け道」が用意されたこともある。

 ただ、日本の名誉のためにいうと、これに対し我が国は、当初、ブラジルや島嶼国等とともに強硬に反対した。確かに森林はCO2を吸収するとはいえ、その生態等によって吸収率の誤差は20~30%あると考えられたからである。これでは各国別削減目標を1%単位でギリギリつめても詮無いことにもなりかねない。

 しかし、森林国の、豪、NZ、米、加、ノルウェー等が、この吸収源をカウントするよう強く主張した。「ネット方式」と「グロス方式」の対立である。しかし、結局は押し切られ、「限定ネット」とでもいうべき方式が採用され、吸収源としては「90年以降の植林、再植林及び森林減少に限定」し、「その上限を国別に設定」、「CDM吸収源事業においては基準年排出量の1%までしか認めない」等の条件が課された。

 その結果、日本の場合、▲6%のうち▲3.8%は森林吸収源でカウント可能となった(先進国全体では▲3.4%/▲5.2%【NGO試算】)。この点は「生ぬるい」と批判されてもやむをえないだろう。

 ただ、同じく「京都メカニズム」として導入されたCDMを、森林吸収源と同列に批判するのは的を得ていない。CDMは「クリーン開発メカニズム」といって、先進国が発展途上国でCO2排出減事業(例:石炭火力のLNG転換や高効率化)を行った場合、その分を国連の認可の下に当該先進国のC02削減分として充当することができる制度である。

 これは、先進国による途上国への技術、資金支援等の国際協力を促し、CO2削減に消極的な途上国を温暖化対策の枠組みの中に引きこむ、いわば「餌」なのである。日本の場合、このCDMで1.6%分の削減が認められた。

 「基準年」の90年がEUに有利で、日米等にとっては不公平だという批判もある。確かに、東西ドイツの統合等でエネルギー効率の悪い東欧諸国がEUに編入されたことや、その後の天然ガス油田の開発等で、EU全体ではCO2排出を減らしやすいという事情はある。

 ただ、EU各国別に目標達成のために何年に戻さなければならないかというと、日本が88年に比し、EU全体は69年、独は60年、英は47年という計算もある。そもそも97年時点での京都会議で統計上信頼できるデータは90年時点だったという事情もあった。ただ、この基準年については「ポスト京都」の中で再検討されるべきであろう。

 「途上国条項」が最後の段階で削除されたことは前回述べた。これが後に米国に離脱する口実を与えたことも事実である。しかし、この京都会議(COP3)の結末は、今や独首相となったメルケル環境相(当時)がCOP1でまとめた「ベルリンマンデート」で、そもそも途上国には「新たな約束は課さない」とされていた帰結でしかなかったのである。当時はやむを得ない結果であった。

 このようにして、京都会議から10年を経て、「京都議定書」の第一期約束期間が、この2008年からスタートしたのである。

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