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江田けんじ 衆議院議員 神奈川8区選出(横浜市青葉区・緑区・都筑区)

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思考停止するな!・・・国際貢献・日米同盟を巡って

2007年9月24日  tag:

 先週、国連安保理で、自衛隊の燃料補給活動を含むインド洋上の海上阻止行動(OEF-MIO)について「感謝決議」がされた。この決議で鬼の首をとったかのような物言いをする人たちがいるが、ちょっと待ってほしい。

 私もこの決議を、いくら日本が働きかけて「感謝してください」とお願いして回ったからといって、また、ロシアが「OEF-MIOは国連の枠外の行動で、一部の国の内政上の事情で決議がゆがめられた」と言って棄権したからといって、いたずらに矮小化してこき下ろすことはしない(ただ、「タダでガソリンスタンド」をやっているのだから、感謝してくれるなら能動的に感謝してほしかったという気持ちは少しある)。

 しかし、この決議で、「不朽の自由作戦」(OEF)の本質的な性格が変わることがないことは、ロシアの言辞を引くまでもなく明らかであろう。

 誰もテロとの戦いに国際的に取り組む必要性を否定する人はいないし、日米同盟が重要なことも論をまたない。問題は、だからといって、何で「インド洋上のガソリンスタンド」なのか、という点が問われなければならないのだ。そこには論理の飛躍があるし、ここ数年の安全保障上の致命的な「思考停止」がある。

 私の考えは、「ガソリンスタンド」を止める多少のマイナスよりも、原理原則なき、戦火が残る状況下での、戦後初めての自衛隊の海外派遣を、説明責任を果たさないまま、なし崩し的に既成事実化していく危険の方が、はるかに大きいというものである。

 今の政府・自民党の考え方を推し進めれば、米国が自衛戦争と位置づける戦争に、後方支援といえども、地球の裏側まで自衛隊を派遣することが可能となる。そんな大きな裁量を与えて(歯止めなく)、時の為政者に最終的な判断を任せればよい、なんていう「性善説」に基づく能天気な態度は、官邸勤務が長い私には到底とれない。

 私の考えの根底には、もちろん、憲法9条と集団的自衛権という、より本質的な問題がある。しかし、現実の問題としても、「国連決議」という「国際社会の総意」に基づかず、米国追随で自衛隊という戦闘能力ある部隊を派遣するということは、「世界の警察官」たる米国と同じように、それだけ世界に敵を多く作るということを意味する。日本人を、日本を、米国人、米国と同じように常にテロと向き合う、戦争と向き合う国民、国家にして良いのか。私は、ここに、インド洋上からの自衛隊の撤退というマイナスよりも、はるかに重要な日本の国益を見るのである。

 ここで退けば、「国際社会の孤児になる」「日米同盟を損ねる」と言う人がいる。結論から言えば、私も多少のフリクション(摩擦)が生ずることは否定しないが、結局は米国も「大変残念だ。でも、これまで日本は良くやってくれた、ありがとう」で終わる話だと思っている。国際社会から日本が指弾されるなど、まったくあり得ない話だ。

 これまで日本は、アフガニスタンの復興支援会議を主導(02年1月東京で開催)し、12億ドル(1400億円)以上の人道・復興支援もしてきた。治安改善のための旧国軍兵の武装解除や社会復帰、道路や学校、病院の建設・修繕、憲法制定や選挙・行政支援などの貢献もしてきた。何もこれらを卑下する必要はない。

 OEF-MIO活動にしても、当初、16カ国約100隻の艦船で開始されたが、今は、6カ国17隻に減っている。既に各国の事情で自主的に撤退しているのだ。日本の自衛艦の補給艦による給油も、これに伴い、ピーク時(02年度17.5万kl)の1/3~1/5に縮小している。日本の自衛隊の油が「ハイオク」で、特にパキスタン船には必要不可欠などという発言(谷内外務次官、シーファー米大使等)が笑止千万(注)という事実も判明した。

 シーレーンの防衛や石油の安全保障を言うなら、中東産油諸国と、イスラエル問題を通じてギクシャクした関係にある米国に追随することが、どれほど日本の、この地域での国益を損ねているかに思いを致した方が良い。

 そして今のアフガニスタンの情勢を見るがいい。パキスタン国境付近を中心にタリバン勢力が盛り返し、テロ撲滅に「力づくの解決」がいかに効を奏さないか、がイラクの現状も含めて証明されてきたではないか。私も何も「武力」がまったく役にたたないというつもりはない。しかし、歴史が証明するように、テロ撲滅には、その資金源たる麻薬や武器・弾薬の密輸ルートを絶つといった根元的な対策が必要とされるのだ。

 そこに日本が貢献すればいい。何もインド洋上でガソリンスタンドをやるだけが能ではないのだ。イランの大統領がカブールに入ってカルザイ政権支持と言ったなら、イランと元々良い外交関係を維持してきた日本が、タリバンとの密輸ルートを絶つように、外務大臣を派遣して交渉すればいい。

 タリバンがテロ資金を使って、学校や病院を建て、アフガンの民心、人心を掌握しているなら、カルザイ政権に汚職に走らず、援助資金をしっかり民衆に還元するように言えばいい。要すればODA資金の増額も考えればいい。いくらでも日本流にテロ撲滅に貢献する方策はあるのだ。

 そうすれば、感謝されこそすれ、ゆめゆめ、国際社会から「日本は何だ」と指弾されるようなことには絶対にならない。メディアで殊更「国際社会が」「日米同盟が」と言っている人も、本当にそう思っている人は実は少ないという事実も指摘しておきたい。

 もう一度言う。インド洋上で「タダのガソリンスタンド」役をやめても、米国との関係では、ダメージコントロールの範囲内だ。それに代わって、日本の資金力、技術力、外交力で総合的なパッケージを打ち出せば、国際社会からこの問題で指弾されることはない。それよりも原理原則なき海外への自衛隊派遣が、いかに我が国の将来の安心・安全に暗雲をもたらすかに、もっと思いを致した方が良い。


【参考】
「テロ特措法延長問題への世界の見方」
                         (2007年9月24日聞取り調査:政府系機関)
(米国)
オピニオン誌
・最近、共和党系・安保畑の保守的知日派の間でも、テロ特措法の帰趨一つをもって「日米関係のリトマス試験紙」と見るのは適当でなく、また、もはや日本も湾岸戦争時のように「安全保障については何もしない」国に逆戻りすることは考えられないのであって、小沢民主党とも対話することが重要であり、その出方をまずは見守るべきといった意見へのシフトが見られる。

日本でも著名な某有名大学教授
・現行法は透明性に欠けでたらめを容認する素地がある。もし、自衛隊艦船が給油している米艦船がイラク戦争に使用されていた、ということになれば日米関係のみならず国際的にも大きな問題だ。

(英国)
元駐日大使
・テロ特措法が、延長されなければそれは残念なことだ。しかし、延長がされなかったからと言って、英国で何か大きなリアクションが起こるということはない。

英国を代表するシンクタンク
・インド洋での支援活動継続について、民主党の理解を得ることは困難だと見ている。しかし、福田新首相は、国際社会と日本の係わりを維持し、仮にテロ特別措置法が、延長されなくても日本の信用が低下することはないと思う。
・米国(ワシントン)、英国はある程度失望するだろうが、米国は日本同様政権と議会のねじれという同じ問題を抱えており、きっと同情するのではないか。大きな問題になるとは思わない。

(フランス)
仏を代表するシンクタンク
・テロ特措法だけに限れば、欧州では大きな問題ではない。

(ドイツ)
独を代表するシンクタンク
・テロ特措法延長が不可能になっても、重要な影響はない。米国は失望するだろうし、メルケル首相も失望するだろうが、西欧では議会多数派の変更により安全保障政策が変わることは通常のことで、それこそが民主主義。スペインの対イラク政策の転換などはその一例だ。ただし、民主党はその場合、国際社会で日本がどのような役割を担うべきかについて、より説明していく必要がある。

(アジア・大洋州)
・テロ特措法が仮に期限切れで一旦中断しても、日本の国際的信用は揺らぐことはないとの意見が大勢である。

中国シンクタンク
・テロ特措法が期限切れとなっても「日本はけしからん」ということにはならない。一時的に中断しても、二度とこうした貢献活動ができなくなるわけでもなく、国際社会における日本のイメージが決定的に悪くなるわけではないであろう。

韓国大学教授
・特措法の延長ができず、海上自衛隊によるインド洋での給油活動が中断されたとしても、日本の国際的信用はまったく失墜しないだろう。

シンガポール シンクタンク・アジアの目でみると「なぜ、インド洋のオペレーションに日本の貢献が必要なのか」という見方や、日本のアジアにおける軍事プレゼンスの拡大を警戒するむきは未だある。


(注)海自の補給艦の油
 自衛隊の補給艦が給油している油は「F76 Fuel」という油で、米国海軍が特注し、
NATO諸国が共用している硫黄分の少ない上質軽油。
 日本だけが上質油を供給できるといった発言は、国民をだます、たちの悪い嘘である。こんな所にも、米国言いなり、受け売りの外務省の体質が出ている。

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