臨時国会、安倍首相退陣へ
2007年9月10日 tag:
安倍首相は昨日、APEC首脳会議終了後の記者会見で、テロ特措法の延長がない場合、自らの退陣を強く示唆する発言を行った。当然であろう。
安倍首相は、インド洋上での自衛隊の補給活動を継続していくために「全力を尽くし職を賭していく」とし、できなかった場合には「当然、私は私の職責にしがみつくということはない」とした。退路を断つことで民主党の柔軟姿勢を引き出し、「対外公約」とまで明言した給油活動の継続につなげたい考えともみられるが、むしろやっと自らの「死に場所」をみつけたということなのではないか。
私は、遠藤農水大臣の引責辞任とテロ特措法延長への世論の反対の強さをみて、このことは事前に予想していた。現在、再放送中の朝日ニュースターの「葉千栄のNIPPONぶった斬り」(収録日9/6木曜日 注:参照)をご覧になっていただければわかる。
安倍首相のように、国家主義的保守政治家の真骨頂は(抽象的な観念論としての)「国のために死ぬ」「国のためなら死ねる」ということだ。祖父の岸信介元首相も、世論はものかは、日米安保改訂に身を賭して取り組み、「私のやったことは歴史が判断してくれる」の一言を残し辞職した。安倍首相にも同じ気概はあるのだろう。
当初、自民党幹部には「テロ特措法については粛々と否決し、世論の動向をみて解散総選挙も伺う」との思惑もあった。自衛隊の補給艦がインド洋から撤退してくる映像が連日、メディアに流れることで、民主党を「国際社会との約束を反故にした」「これで良いのか国際貢献」「テロとの戦いを放棄した」等々で叩けると読んできた節もある。
しかし、状況は変わった。私が指摘した「自衛隊の補給をイラク戦争に転用?」との疑惑もさることながら、自衛隊の戦時海外派遣という安全保障政策の根幹に係わることを、原理原則もなく、なし崩し的に既成事実化してきた小泉政権以来の「相場観の踏み外し」への国民のNOの声も強い。このままでは、小沢一郎氏の筋論が効を奏することになろう。
そうすれば、今回、あえて明確にブッシュ大統領との間で公約したテロ特措法延長も潰える。自民党内の求心力はそうでなくても地に落ち、あいかわらず、国民の間では、参院選惨敗の責任をとるべきとの辞任論も強い。背後には、一日も早く総理総裁になり、来るべき総選挙に向け実績を積み重ねていきたいと意欲満々の麻生幹事長も控えている。
ゆえに、国家主義的保守政治家「安倍晋三」としては、衆愚の世論が何と言おうと、安全保障という国家国益のために、国家百年の大計のために、その根幹に係わると自ら思えるテロ特措法と心中することを決心したのかもしれない。私がやっと「死に場所をみつけた」という所以である。
いずれにせよ、その山は、現行テロ特措法期限切れの、10月下旬から11月初旬に来る。民主党他野党の抵抗でテロ特措法が葬られても、首相への問責決議案が可決されても、そこで安倍自民党が解散総選挙を行うことはできない。自民党の大敗が予想されるからだ。選択は一つ、安倍内閣総辞職だ。それが想定の範囲内だということは、現職の閣僚でさえ、任期は最大3ヶ月と思って仕事をしているということからもわかる。
そうした中で、年末の自民党総裁選も予想される。そこでは、今回の安倍改造人事で、用意周到に布石を打った麻生幹事長が、その思惑どおり各派閥の推薦を受けて立候補し、一方で徹底的に干し上げられた谷垣氏と戦うことになるだろう。当然、麻生氏が圧勝し総理総裁に就任し、谷垣氏は失意のうちに、いや既定路線どおりに自民党離党ということになるのだろうか。
そして、この麻生政権が、政権交代、すなわち自民党幕引き政権となるのか、、政界再編への序章、その引き金をひく政権となるのか。この緊張感あふれる、与野党ガチンコ勝負の国会は、今日から始まる。
(朝日ニュースター「葉千栄のNIPPONぶった斬り」再放送)
9/10月曜 午後2:05~3:55
同 深夜2:05~3:55
9/20木曜 午後2:05~3:55
同 深夜2:05~3:55
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