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江田けんじ 衆議院議員 神奈川8区選出(横浜市青葉区・緑区・都筑区)

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小池 VS 守屋戦争・・・報道されない裏側

2007年8月20日  tag:

 小池防衛相 VS 守屋次官の人事抗争が決着した。ただ、この抗争を、単なる政治家 VS 官僚の図式でとらえてはいけない。その背景には、これまでの普天間基地返還に伴う、沖縄での政治家、土建業者等を巻き込んだ根深い利権構造がある。

 そもそも普天間飛行場の返還は、橋本政権時(96年4月)、「米兵の少女暴行事件」に端を発した沖縄の基地負担軽減の一環として、日米トップレベルの合意で約束したものだ。私は、その政策決定時の当事者の一人(首相秘書官)だった。その後の代替基地案「海上ヘリポート構想」も、事態打開のために私が橋本首相に提案したものだ。

 そうした経緯があるものだから、この10年、私もこの問題については注意深くフォローしてきた。そこには、まさに、魑魅魍魎が跳梁跋扈する世界が垣間見えたのである。

 間違いの始まりは、まさに返還合意当時の原点を見失った政府や沖縄の迷走にあった。安全保障上の要請から沖縄県内移設しかないとすれば、周辺住民の安全面や騒音等の環境面、生態系への負荷等の負担を極力軽減し、日米安保上の要請も満たす、そのベストミックスを追求するしかない。にもかかわらず、それが地元利権への思惑で歪められた。

 その象徴が、当初の「海上施設案」ではなく「埋立方式案」への変更(普天間飛行場代替施設基本計画/平成14年7月)だった。「埋立でないと地元土建業者にお金が落ちない」との理由で、それで甘い汁を吸おうとする政治家を巻き込んでの結果だった。

 その後、紆余曲折があって昨年、名護市のキャンプシュワブ沿岸に建設されるV字型滑走路の建設で一応決着をみた。それを強力に推進したのが守屋事務次官だった。彼には毀誉褒貶があるが、少なくとも本件で、彼個人の思惑や利権等への意識が働いたことはない。代弁すれば、現在のV字案を、知事や名護市長が要望するように沖合にずらせば、米軍の管理水域内からはずれ、途端に、反対派の実力行使や知事の許可権限等の関係から計画が頓挫することを懸念するからだ。事の是非は別にして、彼が頑なにV字案の修正を拒んできた理由はここにある。

 このような中、小池新大臣は、この人事構想が勃発する直前に、沖縄県知事や名護市長と会談した。そこでの「守屋更迭密約説」の真偽はともかく、「守屋更迭」を狙った勢力の中に、地元土建利権のために今のV字案を修正させよう、「北部振興策」と称して10年で1000億円以上の税金を満額国からとるまでは、なるべく代替施設案の決着を先延ばししようという人たちがいることも事実である。そこに、元沖縄担当大臣や元防衛庁長官といった政治家、そして県知事や名護市長までが加わっている。問題は、この沖縄県民、名護市民不在の県政、市政にあるのである。

 この構図にそのまま小池大臣が乗ったとまでは言わない。最近総理総裁候補にも擬せられるようになった自らのリーダーシップを誇示したいという彼女自身の思惑もあっただろう。小池氏指名の後任次官が警察庁出身者ということで、警察vs防衛の安全保障政策をめぐっての主導権争いを指摘する声もある。ただ、重要なことは、沖縄の基地問題を解決するためには、いずれにせよ、この構図を頭に入れておかなければならないということだ。

 それにしても、今回の抗争劇はお粗末だった。役所に限らず、どの組織においても秘密裏に進めるべきトップ人事のプロセスが、新聞報道で表沙汰になり、官邸も巻き込んでの場外バトルになった。大臣としてのガバナビリティー(組織管理能力)が問われて当然だ。また、人事の話を携帯でするというのも常識はずれで、安全保障を所掌する官庁のトップとして危機管理上、失格の烙印を押されてもしょうがない。

 さらに、官邸の人事検討会議の議を経ていないという手続き上の問題も指摘された。ちなみに、この会議は、橋本政権時に私も参画して創設した政治主導の仕組みで、官僚のお手盛りの人事を廃し、時の政権、すなわち、総理の意向で、官僚上層部の人事は行うとの決意表明だった。

 一部、大臣の政治主導のこの人事を礼賛する向きもあるが、この制度は、大臣だけの独断を廃し、「官邸主導」で時の政権の政策遂行を支える官僚を任命する「ポリティカルアポインティー」の仕組みでもある。ましてや、自衛隊の最高司令官は総理であって防衛大臣ではないのだから、シビリアンコントロール(文民統制)の面でも、この人事を最終的には官邸で判断するのは当たり前の話だ。この点をないがしろにした小池大臣の勇み足も批判されるべきだ。

 ただ、今回もまた、当初は静観、先送りだった総理の判断が、マスコミに連日取り上げられ、官邸の危機管理能力まで指摘されるに及んで翻意するという、年金対応や政治とカネでみせた例の安倍スタイルを踏襲したことだ。当初は事の重大性の認識がなく、追い込まれてからあたふたと対応する。この繰り返しでは早晩、安倍退陣必至であろう。

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