安倍首相が施政方針演説・・・どんな国をどう目指すのか?
2007年1月29日 tag:
26日に安倍首相の施政方針演説があった。よく言えば「実務型の政策中心の演説」、悪く言えば「美辞麗句踊って感動なしの演説」だった。ただ、私も、海部・宮澤内閣で、その草稿作りの責任者をつとめ、橋本内閣ではその骨格作りに携わった経験もあるので、同情すべき点もある。要は、今後の実行次第であろう。
その上で、疑問点や改善すべき点を、いくつか指摘したい。
まず、参院選の争点は「憲法改正」、「国のかたちを決めるのは憲法」と安倍首相が意気込む割には、16ページ(一万字近く)にわたる演説で、憲法改正にふれたのは「むすび」でたった二行だった。それも「議論を深める」という当たり障りのない、淡々としたものだった。政府として、国会、特に野党に配慮したのだろうが、あまりにもそっけない書き方だ。
教育再生を「内閣の最重要課題」とし、大いなる意欲を示すのだが、演説中、それが出てくる順番は「経済成長」「再チャレンジ」等に続く5番目(政策項目7つのうち)だった。安倍首相は今国会を「教育再生国会」として位置づけ、教育再生会議の緊提言も出て、今国会でも関連法案を成立させるべく文字通り「最重要課題」して取り組むのだから、思い切って演説冒頭から切り込んでもよかった。
一方、民主党が今国会を「格差是正国会」と位置づけるのに意地を張ったのだろうが、演説中「格差」とか「格差社会」「格差是正」という言葉が一つもなかった。「成長戦略」と「格差是正」は矛盾しないのだから、あえて真正面から取り上げ、首相肝いりの再チャレンジ政策(パートの地位向上、最低賃金引き上げ等)で万全の対応を期すとした方が、対民主党対策ではよかった。
ただ、最大の問題は、前文で「戦後レジーム」からの脱却を言いながら、その具体的道筋やその先にある日本の姿が見えなかったことだ。美辞麗句、すなわち「美しい国創り」とか、世界に「模範となる国」と言われても具体的なイメージがわかない。これまで「安住」してきた戦後システムにNOを言うなら、何がどう問題なのかを明らかにしながら、今後、どういう基本的考えで国造りをしていくのか示してほしかった。
総じて、「はじめに」と「むすび」と、真ん中(よく私は「はらわた」と称していた)、すなわち各政策部品との関連がよくわからなかった。演説作成の内情を知る者からすると、「はじめに」と「むすび」を安倍言語で書いた上で、霞ヶ関から提出された「部品を」組み込んだのだろう。演説作成手法からの限界が垣間見える。
いずれにせよ、「美しい国創り」の今後の道筋が明らかでないのは、正直に言えば、安部首相本来の「タカ派的体質」が明らかになるので参院選前は控えるということなのか、それとも、まだこの内閣に確固とした考えや政策がないからだけなのか、それが判明するには、もう少し国会論戦や時日が必要ということなのだろうか。
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