議員外交?・・・山崎拓氏訪朝
2007年1月15日 tag:
先週、山崎拓氏が訪朝した。案の定何の成果もなかった。当然であろう。時の政権と連携もせず、何の権限も持たない人間が「対話が重要」と言ってみたところで、事態が進展するほど今の北朝鮮危機の状況はあまくない。
この訪朝をめぐっては、山崎氏の口から「議員外交」という言葉が発せられた。これに対し「二元外交」「スタンドプレー」等の批判も浴びせられた。通産大臣秘書官として、首相秘書官として「日米自動車交渉」や「首脳外交」の現場に身をおいてきた立場から言っても、今回の訪朝はまったく理解に苦しむ。
ただ「事態が膠着状態の中で何か打開策を」という一部世論もあるので若干説明したい。問題は、訪朝しても人畜無害、すなわち「ステイタス・クオ(現状維持)」であればまだ良いのだが、往々にしてこうした二元外交にはマイナスが伴う。
今回の場合、北朝鮮の「招待(?)」の思惑は明らかで、「圧力派」の安倍政権と距離をおく「対話派」の山崎氏と会うことで日本の分断工作をしよういうことだ。「揺さぶり戦術」と言ってもいい。北朝鮮は「独裁国家」かつ頑強な一枚岩で、外交窓口も一本化している。こうした国と「切った張った」の交渉をしようと思うなら、最低限、こちらも一致結束、窓口一本化で抗しなければ話にならない。日本が分断され、世論が揺れれば、相手の思う壺、その足元をみられて、はかどる交渉も進まなくなる。
「六者協議」が何の成果を生まないことに歯がゆさを感じるのはわかるが、こうした外交交渉には多大な経緯の蓄積があり、また対外的に明らかにしていない駆け引き等もある。門外漢が、単に外務省からブリーフを受けただけで「ヌーボー」と出て行ってもピエロになるだけだ。ましてや、議員の功名心あまって、日本や米国の内情等の情報提供、その「手の内」をみせるなどはもってのほかだ。
今回の訪朝は、山崎氏側近の平沢勝栄氏によれば「米国や中国の了承を得た(お願いされた)」そうだ。仮にそうなら、その内実は、少しでも官邸で外交に携わった私には容易に推測できる。
決して米国や中国の指導層からOKが出ているわけではない。米国でも、北朝鮮との「関与派・対話派」の国務省OB筋が、ブッシュ政権下では自分たちが訪朝するわけにはいかないので「行くならどうぞ」程度のことだ。せいぜい、今月下旬には、米国は北朝鮮と「金融制裁」をめぐって交渉をするから、上層部、できれば金正日氏の本音でもわかればありがたい程度のことだろう。また、中国は元々米朝直接対話を促しているから、その仲立ちとしての山崎氏の動きはもちろん止めない。
何も私は「議員外交」を否定しているわけではない。世界二百カ国近くの国と「友好」を深めるための「議員外交」ならどんどんやってほしい。しかし、「議員外交」で交渉はしないことだ。例外的にどうしてもその必要がある場合には、時の政権と綿密に連携し、その指示で政府外交の地ならしとして行う。過去の経験が教えるとおり、金丸訪朝団をはじめ「議員外交」での交渉はろくでもない結果をもたらす。
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