『振り子は必ずもどる』・・・米国中間選挙
2006年11月14日 tag:
米国の中間選挙で、民主党が上下院の過半数を制した。やはり、米国では「振れすぎた振り子は戻る」。米国民主主義の健全性を見事に証明したと言えよう。
最大の要因は、イラク戦争だった。政治スキャンダルの影響もあっただろうが、それだけではこんな逆転劇は実現しない。ブッシュ政権のイラク政策に明確に「NO」が突きつけられたのだ。
イラクでは、今でも日々100名以上の死者が出、戦争時よりむしろ増えている実情がある。米兵の死者も相変わらず増え続け、米国の新聞には連日、その無惨な様子を伝える写真が掲載される。そして、開戦理由だった「大量破壊兵器の存在」も「アルカイーダとイラクの関係」もなかったことが判明し、戦争そのものの正当性への厳しい目も注がれた。イラク戦争、イラク政策が失敗だったという米国民の明確な意思表明、それが今回の選挙結果だ。
それに引きかえ、日本の民主主義はどうか。相変わらず、自衛隊派遣は復興に寄与して「よかったよかった」で思考停止している。イラク戦争の正当性を論じる気風も今更なく、イラク戦争で世界はより一層危険になったという認識もない。当時、私が小泉首相への質問主意書やメディアで警鐘を発したことが、そのまま現実のものとなったというのに。
日本政府も「自衛隊派遣は国際貢献」と強調するが、世界の人々のほとんどが「日本の自衛隊派遣」を知らないという現実が語られることはない。政府レベルでは賞賛する米国ですら、ニューヨークの街頭で聞いても、自衛隊派遣なぞ十人に一人も知らない。
そんな「柔(やわ)な」状況だから、「核武装も議論すべし」といった意見が政権の中枢から出ても、何となく、それが許される状況になっている。大変恐ろしいことだ。日本においては「民主主義」は機能しないのか?
この選挙結果を受けて、ブッシュ大統領は、軍事外交の方向転換を即断した。間髪を入れずにラムズフェルド国防長官を更迭し、後任にロバート・ゲイツ(テキサス農工大学長、元CIA長官)氏を指名した。ゲイツ氏は、ベーカー元国務長官の人脈に連なる人物で、民主党とも近い関係にある。今後は、少しは「一国主義」「単独主義」から「国連重視」「話し合い・外交重視」へと転換していくことになるだろう。ベーカー氏といえば、つまりは「パパ・ブッシュ」の人脈で、すなわち、父の流儀に息子が屈服することを意味する。
何度も指摘したが、小泉政権時代は「米国追従」ではなく「ブッシュ追従」だった。米国では民主主義が機能し、米国は「ふところの深い」国である。ブッシュ路線だけに加担していると、やがてブッシュが退陣した時、日本だけが「はしごをはずされる」ということも十分考えられる。安倍政権のなすべきことは、自らの国益を最優先に、「変わりつつある米国」と真剣にコミュニケーションを取り、全く新しい開かれた日米関係を築くことだろう。
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